愛を言葉にするのは難しい。
だが尋ねた先でいきなり妙な動きを見せられれば、相手の正気を疑うというもの。何か呪いでも掛けられたのかと杖を出した私に非はない。
「これは、あの……歴とした求愛ダンスでして……」
エリマキのように広げ持ち上げていたマントを脱ぎ捨てて、リリーがそそくさと紅茶を淹れに壁際へ逃げる。私は懐へ杖を戻しながら軽くため息をついた。
「君はいつもこんなことを?」
「いえいえまさか!たまーにですよ!」
「しているのか……」
「運良く見れたものを忘れてしまわないように身体に叩き込んでいると言いますか……これは趣味でありながら仕事の一貫とも……」
モゴモゴと口ごもり、彼女が指先を遊ばせる。照れながらも苦笑するその表情に、自然と口角に笑みが浮かんだ。しかし彼女が控えめに先程の続きのような動きをして見せて、笑みはすぐに呆れたものへと変わる。
「せめてヒトに伝わるものにしてくれ。これではどう応えれば良いのか分からんだろう」
例えば、と何か示してやろうと彼女を引き寄せる。そのしなやかな腰に片手を添えて、視線を甘く絡ませた。あとは言葉に乗せるだけ。だというのに、愛を言葉にするのは難しい。これなら踊った分だけ彼女の方が上かもしれない。
どれだけ息を吸い込めど、果たして私からはこの感情を表すに相応しい
言葉が出なかった。
Special Thanks
you
(2019.6.30)