まずは土作りから


まずは土作りから♪

ドラゴンの糞から作った肥料は欠かせない♪
たっぷりとミネラルも混ぜ込んで、火山灰も少々♪
出てきたミミズは土へとお帰り♪
魔法薬の材料になんてさせられない♪


「それは私がそばにいると分かった上でわざとか?」


即興の歌に横やりが入って中断される。リリーは盛り上がった畝を小さなスコップで整えながら、腕組みをして動こうとしない男を見上げた。


「もちろんです」

「君はスプラウトの助手だろう。何故野菜を育てる?」

「スネイプ教授に食べていただくためですよ」


過ごしやすい季節も畑仕事をすれば汗が滲む。リリーは額へタオルを押し当てたが、スネイプは涼しげな顔で全身を覆う黒のローブを纏い続けていた。


「野菜嫌いの子供ではないのだがね」

「強いて言うなら、食事嫌いの大人でしょうかね」

「嫌ってはいない」

「好きでもないでしょう?」

「口いっぱいに頬張ったり、食べきらないうちから別の料理をよそうことをしないだけだ。君とは違ってな」

「見られていたなんて、恥ずかしい」


キャッ、とリリーが頬に手を当て、赤くもない頬を隠す仕草をして見せる。スネイプは呆れた息をつきながら、彼女の頬に付いた土を自らの袖口で拭ってやった。


「やっと腕組みを解いたついでに、少しくらい手伝っていただけませんか?」

「魔法で、なら」

「ダメです!マグル式で愛情を込めて育てた方が美味しくなるんですよ」

「どうだかな。私が味の違いを分かるとは思えんが」

「私の愛情の味、舌で感じてくださいね」


トマトの苗で口元を隠し、リリーがはにかむ。ほんのりと色付く耳を見せながら、彼女が畑へと苗を植え付けた。そんな彼女の背に、スネイプはふっと笑みを溢した。




マグル式の菜園は、時間をかけてゆっくりと育っていった。降り注ぐ陽は厳しさを増し、野菜へ活力を与えていく。リリーの甲斐甲斐しい世話もあり、どれも青々と、または瑞々しく、収穫期を迎えた。


「今日は初トマトですよ、スネイプ教授!」


リリーが手招いてスネイプを急かす。彼は持たされたカゴをゆらゆらと指先で弄んだ。大して興味はないと態度に出して、それでも彼女に付き合う。

リリーが赤く熟れた大きなトマトを摘み取った。


「きっと愛情の味がしますよ」


差し出したトマトは眉間のシワに拒まれた。トマトで彼の薄い唇をツンとついてみても、開く気配はない。仕方ない、とリリーは自分でかぶり付いた。独特の青くささとどことなく太陽の味。酸味が口いっぱいに広がって、んふふ、と笑いが漏れる。


「またそのように頬張って。まるで子供ではないか」


リリーの口端に付いたトマトの名残をスネイプが親指で拭った。そして彼女の腕ごとトマトを引き寄せる。彼もまた、トマトにかぶり付いた。モグモグと大袈裟に咀嚼して、キラキラと輝く彼女の瞳を焦らす。


「ぬるい」

「もぎたてはこうでないと」


彼女の指へ垂れたトマトの汁へ、スネイプが唇を寄せる。目を見開いた彼女の眼前で拭われていった。


「よく熟れているな」


スネイプがニヤリと口角を上げた。リリーは熱くなった頬へ片手を当てて、誤魔化すようにまたトマトを一口かじる。クツクツと笑いながら、スネイプは別のトマトを摘み取った。


「豊作 豊作」

Special Thanks
you
(2019.6.20)


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