単なる探し物のはずだった


単なる探し物のはずだった。

「物」と言うよりは「者」で、「人」と言うよりは「血」で、「血」ならばやっぱり「物」かもしれない。

不死鳥の騎士団が少しでも有利になれるように、協力を取り付けておきたい血族がいた。ただ彼らは一ヶ所に留まらず、追跡すべてを打ち消す呪文に守られている。一筋縄にはいかないが、打てる策すべてを順に行い、各地を回るだけの単純な任務。

人手不足の騎士団で、私一人でもやってみせると意気込んでいたのに、隣にはセブルスが勝手について来た。


『セブルスがこの任務に参加すると言って聞かなくてね。夏期休暇中に終えられるかも分からないのに、何か策があるなら良いんだけど』


任務への出発前、リーマスがそう言っていた。彼はセブルスの不可解な言動に近頃癖付いてしまった険しい顔をしていたが、私にはセブルスの心が読める。そしてその心は、私と一緒。

明日、自分がどうなっているかも分からないこの時世。少しでも共に。これから話せる機会もどんどんと失われていくのが目に見えている。後悔のないように。


探し物は一向に見つからなかった。


「このまま、彼らが見つからないまま策が尽きたらどうします? 」

「どうもこうも、諦める他ない。こればかりに時間を割くわけにはいかん」

「イギリスの中心部から離れれば離れるほど、まだ人々の心にゆとりがあるような気がします」

「そのゆとりが明暗を分けるとも知らずに」


手を繋ぎ、姿くらましをした。

魔法使いの住む山村近くへ現れても、私たちはまだ手を繋いでいた。真っ直ぐ行く先を見据えたまま、手のひらを離さずに、指同士を絡め合う。

夕暮れに鳴く鳥や、若い緑の匂い、澄んだ空気。豊かさに溢れた土地だった。

私たちは任務で各地を飛び回りながら、こんな場所を探し求めていたのかもしれない。


「このままここで暮らしちゃいますか?」

「すべてを投げ出して、か?」

「二人で野菜や薬草を育てて暮らすんです。安定してきたら、賑やかな家庭を築きたい。子供は少なくても3人。如何ですか?」

「君は安全な場所にいて、背負うものは何もない。追うことも、追われることも。リリーと共にならば、それも良いのかもしれん」


ぎゅっ、とどちらともなく手に力を込めた。彼が今どんな表情をしているのかは、分からない。

けれど、彼の言葉と私の心は重なった。


「なんて、な」

なんちゃって。

Special Thanks
you
(2019.6.12)


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