夜が更けていく


夜が更けていく。

生徒たちのいない中庭を独り占めして、面白くもない空を眺めた。今夜は雲に覆われ星一つ見えない。見えたところでどうということはないけれど。ポカンと口を開け、脱力しきった身体を律することなく、時間の流れに漂っていた。

そこへひとつ、気配が近付く。

なかなか声をかけてこないその人物を振り返った。


「こんばんは、スネイプ教授」

「君と言えど出歩く時間ではない」

「たまには良いものですよ。教授は見回りですか?」


私とは違い、少し緊張感を残した彼の佇まい。


「いや、君と似たようなものだ」


彼は遠慮なく隣に陣取って、同じく空を見上げた。

真っ直ぐに、私には見えない何かがあるのではと思ってしまうほど、確固とした彼の視線。少し離れて焚かれる松明に浮かぶ朧な輪郭と相俟って、その闇夜の瞳がひどく殉教的に思えた。


「スネイプ教授……」

「何だ?」


その目は私を見なかった。


「いえ、あの……」

「このまま朝まで話すか?」


くっと喉で笑って、彼は私に決定権を寄越した。名案だと乗っかれば、本当に中庭で朝日を迎えることになりそうで。


「ご冗談を。明日も授業ですよ。そろそろベッドに戻らなければ」

「眠れそうか?」

「はい、何とか。教授は?」

「いつものことだ」


立ち上がる私に反して、彼は微動だにしなかった。ただため息とは違う深い息を吐ききって、曇り空を見つめていた。


「また明日」


私が言った。

そして彼からも。


「あぁ、

また明日」

Special Thanks
you
(2019.5.18)


戻る



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -