人間には三大欲求があるというが


人間には三大欲求があるというが、

中でも食欲と睡眠欲は毎日満たさなければ活動に支障が出る。しかし欲の程度は人それぞれ。ホグワーツで魔法薬学に従事する二人――セブルス・スネイプとリリー・エバンズ――はその欲が他人よりも希薄だった。魔法薬の研究に熱中するあまり、空腹や睡魔は度々忘れ去られていた。

そんな二人を心配した1人の同僚が、長い夏の終わりに生徒よりも一足早く、帰省より舞い戻っていた。彼女は旅行鞄を自室に置くと、次に地下へと下りたが、目的の二人は研究室にはいなかった。

馴染みの猫に声をかけながら、彼女は校庭へと足を向ける。

この時期、二人は薬草採集のため外にいることも多かった。陽も当たらず地下に籠りきりになるよりは幾分かましだと言える。しかしその分エネルギーの消費は大きい。より食事と睡眠に気をかけなければ倒れてしまう。自己管理のできない子供ではないと分かってはいても、彼女は二人の顔を見ずにはいられなかった。


正面玄関で出会った白猫の情報で、彼女は湖畔に来ていた。太陽光を反射し無数の輝きを魅せる湖面に目を細め、二人の姿を探す。

見つかったのは、学校の備品である古い型の箒が一本だけ。雄大なブナの根元に転がっていたそれを拾い上げ、彼女はだらしのない使用者へため息をついた。この休暇中、ホグワーツには教職員しか残っていないはずなのに、誰がこんな子供でもしないことを。

犯人はすぐに見つかった。彼女が箒を拾ったそのすぐ上で、太い枝から生える足が四本。見覚えのある服装に、彼女が後退る。枝葉の隙間からその足の持ち主を確認すると、探していた二人だった。

セブルスが幹に寄りかかり、リリーは彼に寄りかかる。どちらも目を閉じて、弛んだ表情をしていた。その近くの枝にはピクニックバスケットが掛けられている。

芝に落ちたパンくずを茶色い小鳥が啄んだ。

老魔女の心配は無用だった。彼女は珍しい光景に微笑んで、踵を返す。箒はブナの根元に立てかけておいた。


生徒には悪名高い男が助手を抱きしめ安心しきった顔で眠る。休暇中にだけ見ることのできる、

嘘みたいな本当の話。

Special Thanks
you
(2019.5.8)


戻る



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -