「毎日、君の作った味噌汁が飲みたい」
突然、セブルスがそんなことを言い出した。彼が目を覚まして数日。体調のわりには退院もできず、病院食にも飽きてきたのだろう。大して食に興味はなかったように思うが、意を決した様子の彼は、暴飲暴食にも目覚めたのかもしれない。
「暇すぎて日本についての本でもお読みになったんですか?差し入れたいのは山々ですが、流石に味噌汁はちょっと。蛙チョコかレモンキャンディならここにありますよ」
クスクスと笑って、片付けたばかりの見舞い品からお菓子をいくつか取り出した。しかし彼は不満そうに眉を寄せ、睨んでいるのかと思うほどの目でこちらを見ているだけ。
「生徒向けのホグワーツの料理よりここの方があなたには合っているんじゃありませんか?」
「別に……」
今度は不貞腐れ、ベッドカバーを無意味に弄ってはあちらこちらにシワを作る。何も語らぬまま視線は逸らされてしまった。
「退院したら作りますから」
「毎日?」
「ご希望ならば。でもお口に合うか分かりませんよ?」
「重要なのは、そこではない」
煮え切らない彼の態度は私までもを不機嫌に染めだした。ベッドを上から見下ろし圧をかける。加えて両手を腰に当て首を傾げることで彼に説明を促した。
「てっきり、私は、リリーに通じるものだとばかり……。よもや私を謀っているのではあるまいな?」
「つまり、私と喧嘩がしたいと?」
「違う!決して、そうでは……!私が言いたかったのは、要するに……食事どうこうではなく……」
彼がまた、決意を固めた表情で私を見つめた。
「君の母国の定番プロポーズなのでは?」
Special Thanks
江利加様
(2019.5.5)