魔法が解けないうちに


魔法が解けないうちに、

リリーはスネイプを見つけ出すことができた。黄金色の一匙が、彼女にもたらした幸運。それは暴れ柳の下から這い出てくるハリーたちと出会うこと。その手には銀色の輝きを溢す小瓶を握りしめていた。

しかしリリーが叫びの屋敷へと到着したとき、既にスネイプに息はなかった。


『何が幸運よ!』


彼女は泣き叫び、横たわる身体を強く抱きしめた。意思は尊重するが死にたいとは聞いていない。『どうもしない』と言っておきながら、彼女は足掻きを始めた。かつては目指した癒者の道。心が折れてしまった数多の呪文、責任、無力感。遠ざけていたすべてをかき集め、リリーはスネイプの魂を引き戻そうと躍起になった。


そして今。

スネイプはリリーのそばで眠っている。安らかな、永遠のものとも思える深い眠り。しかし彼は冷たい土の中ではなく、聖マンゴ病院の特別室に置かれたベッドにいた。そのサイドテーブルには、未だ目覚めぬ勇敢な男を案じる品々が山積みになっている。

一向に訪れない彼の目覚めに待ち疲れ、寄り添うように不本意な眠りへと落ちてしまったリリーのそばで、ピクリと奇跡が筋肉の収縮を起こした。彼の指先がベッドへ散らばる彼女の髪を掠める。

呼ばれたかのように、リリーが目を覚ました。幸運が花開こうとしているとも知らず、脱力したスネイプの腕を取り、指同士を絡ませる。


「また、あなたの夢を見ました。癒者はもうすぐ目を覚ますに違いないって。もう、何度も、もうすぐだって……

本当ならいいのに」

Special Thanks
you
(2019.5.4)


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