おはようと君に言えたら


おはようと君に言えたら、

また明日、おはようと君に言えたら、神とやらを信じる気になるのかもしれない。しかし現実は容赦なく、私へ死を突きつける。

闇の帝王に呼び出されたのは叫びの屋敷。交わした言葉は平行線で。ナギニが、私へと――。

正しく、私の視た光景だった。


最期に違いないこの瞬間を、私はリリーの瞳を持つ青年といた。これを奇跡と呼ぶのだろう。彼に残した私の記憶に未来を託すことができた。


「私を……見てくれ……」


私にはもう、その瞳から心の奥底を覗く力は残されていなかったが、緑がリリーに似た煌めきを見せていた。

アーモンド形をした緑の美しい瞳。


これで良い。

死がこんなにも緩やかで、冴え渡るものだったとは。すべての荷を肩から下ろして迎える新しい世界に、リリーはいてくれるだろうか。また、私と口を利いてくれるだろうか。

早く、眠りにつきたい。

未練を数えてしまう前に。

彼女は――リリーは無事だろうか。そうでなければ困る。私に『どうもしない』と強がって見せた彼女。『あなたの意思を尊重する』と泣いた彼女。


リリーのお陰で世界が輝き始めた。

リリーのお陰で世界は輝き続けていた。

これ以上の幸せはない。

Special Thanks
you
(2019.5.2)


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