優しさで包み込んでくれた。
いつまでもリリーのもたらす温もりの中で揺蕩っていられるのだと、そう信じ込んでいた。彼女のいる日々は心地好すぎて、私の身には余ると感じながらも、手放せずにいた。
人生の半分以上を暗闇の中で生きた私へ、何かが彼女を遣わしたのでは。彼女の平穏な運命を無理矢理にねじ曲げて。柄にもない馬鹿げた考えが過るほど、彼女は私の対極を生きていた。輝いていた。
私の元から去るだけならばどれほど良かったか。
そう思う日が来ようとは。
『スネイプ教授に認めてもらえるなんて、私、幸せです!』
『ん〜、幸せ!このタルトすっごく美味しいですよ、セブルスさん!』
『こうやってセブルスと紅茶を飲む時間が私の幸せ』
『あなたに会う度に――いえ、会えなくても――心にいるあなたを思って、幸せを噛み締めるの』
心に生きる彼女は絶えることのない笑顔で、私を見つめていた。
今、目の前にいる人間とは、違う。
「リリー……」
彼女に言葉は届かなかった。光そのものだった彼女の瞳が今や澱み、何も映し出していない。突き上げる吐き気を呑み込んで、杖腕を真っ直ぐ前へと持ち上げた。
「私を許さないでくれ……」
友のように親しんできた闇の魔術を、これ程までに恨むことになるとは思いもしなかった。
幸せとは何か。今はわかる気がする。
Special Thanks
you
(2019.4.24)