「ムカつく。
ムカつく、ムカつく、ムカつく!何よ、自分がすべて正しいみたいな顔して!やってることは下劣で誇りも何もないじゃない!」
空き教室の並ぶ廊下の片隅。雲間から顔を覗かせる太陽目掛けて女子生徒が吼えた。鼻息荒く腕を組み、隣の男子生徒をキッと力強く睨む。
「セブルス!被害者はあなたでしょ!さっきまでの勢いはどこ!?」
セブルスは自身の黒い杖を弄びながら、時折杖先から迸る火花を眺めていた。
「僕のイライラは全部リリーに吸い取られた。お陰で冷静な頭で考えられる」
「何を考えてるのか知らないけど、その間にあの丸眼鏡とブラック家の恥晒しの顔面に拳をめり込ませた方がスッキリすると思わない?」
「思わない。あんなやつらを叩きのめすために僕の手を痛める気は更々ない。もちろん、君の手も」
セブルスは天へ翳した左手を握った。空を掴むには力を入れすぎているそれに、リリーは口を噤む。そして深呼吸をすべく息を吸い、唸り声でそれを吐き出した。しかし収まりきらない感情を杖に乗せ、悲運なコガネムシを打ち落とす。
「スリザリンは頭が良い。レイブンクローの表面的な賢さではなく、もっと役立つ能力だ」
「つまり?」
「報復は必ず。それも僕だと分からない手段で。協力する気は?」
「ある!」
リリーは杖を掲げた。
「ならまずは頭を冷やせ、同志リリー。このキャンディ、好きだろう?」
スネイプは杖を仕舞い、代わりに鮮やかな花柄のキャンディ包みを取り出した。少し依れた一粒がリリーの手のひらに落とされる。彼女はすぐにそれを解くと、満面の笑みで口へと放った。
「……だいすき」
Special Thanks
you
(2019.4.18)