女を抱くのは初めてではないのに。
彼女を見た瞬間、ゴクリと喉が鳴った。同じ時、別の場所では見知らぬ男が他の女とよろしくやっている。これからの私のように。そんな中、彼女が私の元へ現れたのは運命だと思えた。
女なんてみんな同じだと思っていた。その身体さえあれば、誰であっても同じこと。
しかし彼女は違った。
彼女は太陽の対極にいるような雰囲気を身に纏い、ニコリともせず、私を真っ直ぐに見つめる。その目に意識が吸い込まれ、彼女以外を考えられなくなった。
今日はひどく喉が乾く。
「名前は?」
「呼びたいなら、リリーと」
目の前の男は私の夜をほんの少しだけ金で買った。陽の下では生きづらそうな、誰にも見向きされずに人生を捨ててきたような顔の哀れな男。けれどその瞳だけは、何にも染まることのない漆黒を携えていた。
名を聞かれ、つい本名を答えてしまうなんて。
「リリー」
ゴクリと私の喉が鳴る。彼の声は不思議な響きを伴って、耳を犯した。熱っぽく、滑稽で、雄々しく、性急な。
腕を引かれ、身体が歓喜に震えた。ゾクリと、これからの情痴に震えた。おまけに声までもが震えそうで、私は言葉を呑み込むことにした。
男に抱かれるのは初めてではないのに。
Special Thanks
you
(2019.4.16)