朝帰り。
夏の長期休暇をセブルスの家で過ごすようになってから何度目だろうか。国外で過ごし掴まらないケトルバーン教授に代わっての、今月二度目となるハグリッドからの呼び出しは。
今回はヒッポグリフの急病だった。太陽が顔を出す頃には容態が安定。あとはハグリッドに任せれば問題ないと判断し、気を抜いた重い身体を引きずって帰宅した。
玄関扉を開けてすぐのリビングからソファが私を誘う。けれど断腸の思いで無視を決め、ふらふらと頼りない足取りでバスルームへ直行した。お湯を全身に浴びれば、多少はスッキリと頭が整理できた気がする。
それでも眠気が消えることはない。
肌触りがお気に入りのナイトローブに身を包み、先客のいる寝室の扉を開けた。中央に設置した部屋に不釣り合いな大きなベッド。その端で丸まる愛しい背中が規則的な寝息を立てていた。
規則正しく、いつもより落ち着いたテンポで上下するシーツを眺める。そしてゆっくりと、ベッドのスプリングをなるべく刺激しないように体重を移していった。
「おやすみなさい」
囁いて、彼のこめかみにキスを落とす。
「こんな時間までご苦労なことだな」
くぐもった声に身を引くと、くるりと彼がこちらを向いた。そして疲れきった私の身体を左腕ひとつで自身の隣へと引きずり込む。
30センチほどの距離で目が合って、彼はトロリと瞼を下ろした。
「起こしちゃった?」
「用があれば起きることもある時間だ。気にするな」
「今日は?」
「寝直す」
ガッチリと腰に回された腕を見習って、私も彼を包み込む。彼がグッと腕に力を入れて、更に私たちを隔てる距離がなくなった。
「君の香りが薄い」
「シャワーを浴びたの。汗とヒッポグリフの匂いでベッドに入りたくなかったから」
「気にするのか」
「あなたがいる夜だけはね。そう言うあなたはいつから匂いフェチに?」
「……早く寝ろ。そして忘れてしまえ」
「起きても覚えてる」
カーテン越しの朝日が強まり、優しく寝室へ陽を注ぐ。呼吸も、鼓動も、すべてが重なっていく感覚に身を委ね、微睡みへと意識を投じる。
「おやすみなさい」
Special Thanks
you
(2019.4.15)