私があなたの騎士になる。
大切な、大切な、リリー・エバンズ。だからもう、彼を許してあげて。解き放ってあげて。彼を自由にしてあげて。
例えそれを、彼自身が望まなくとも。
「セブルス、ねぇお願い、考え直して!」
「私がする他に道はない。リリー、ダンブルドアは私に任務を命じたのだ!」
「あなたに?私達にだわ!」
長期休暇のホグワーツ。職員すらもいないこの場所で、地下牢に男女の叫びが木霊する。地上へ漏れることのないその声が、互いの感情を隠すことなく晒していた。
「セブルスがする必要はない。私にだってできる」
「いや、私でなければならない」
「どうして?ダンブルドアに報いるため?彼があなたに何かしてくれた?」
「違う。彼のためではない」
じゃあ誰のため?
その言葉は喉の奥へと沈んでいった。彼の行うすべては、ただ一人に帰結する。
「あなたは騎士なんて柄じゃない」
唇から溢れ落ちた言葉が彼の眉間を寄せた。
「何の話だ?」
「ただの、言葉遊びよ」
セブルスは彼女に惹かれる運命だった。そう思わざるを得ない神様の悪戯。
「とにかく、この件については後日冷静になってから話し合いましょう」
「改めたところで無駄になるだろうな」
お願い、リリー。代わりに私があなたの騎士になるから。だから彼を連れていかないで。たとえ許すと彼に伝えるためだとしても。私は彼を愛しているの。あなたが太陽の下で笑っていた頃から、ずっと。
この愛が届かなくても。
原文 私が貴方の騎士になる
Special Thanks
you
(2019.4.3)