I love you.


『I love you...』

気取ったメロディーと共にラジオから歌が流れてきた。分かりやすい愛の歌。低い声がしっとりと歌い上げるそれに聞き入ってしまうのは、私にも愛する人がいるからに違いない。

愛して愛してやまない人。

この夜空のように掴めない人。

底無しの黒に見えて、青や赤や黄を混ぜ入れたような人。

曲がサビに差し掛かり、「私」は「愛する人」のため身を引くことを決意した。私とは違う選択にラジオの周波数を変えれば、他はどこも嫌なニュースばかり。危険分子ナンバーワンを捕まえようと情報提供を呼び掛けたり、有名なアーティストが国外へと避難したり。例のあの人の復活は瞬く間に世間を変えてしまった。


静まり返った部屋に、ノックが響いた。せっかちなリズムを刻むこの音は逢瀬の合図。薄く開き、スルリと入り込んでくる影に場所を譲る。


「セブルス、待っていたのよ」


施錠と防音に努める姿は見慣れたもの。その間も惜しく、彼の下がる杖腕をとって手を握った。伝わる体温に安心してホッと息をつく。


「今日、闇の帝王がここへ来た」

「彼直々にホグワーツへ?ここはあなたに任せているのに?」

「あぁ。理由は不明だ。ダンブルドアも私に情報を与える気はない」


はぁ、と彼から出たため息を幸福に変える魔法があればいいのに。ため息を風で舞い上げ花びらのシャワーへ変えて彼へと降り注ぐ。似合わないな、と二人して笑えれば、それこそが幸福。


「何かが迫っている。我々の知らないところで何かは着実に歩みを進めている」

「ハリーが悪い方へ進んでいないと良いんだけど」

「あの子は一人ではない」

「あなたも一人じゃない。一人になんてさせてあげない」

「そして君には私がいる」


どちらともなく、握り合う手の力を強めた。


「庇い合いはナシね」

「庇い合い?」

「今日、部屋で待っててくれって言ったのは、例のあの人が来るからでしょう?」

「それは少し違う。あのお方と話せば、必ずリリーを抱きしめたくなると分かっていたからだ」


驚く私に、彼は悪戯が成功した子供のような顔をして見せた。言葉の通りに抱きしめられて、五感すべてで彼を感じる。見えなくなってしまったその表情は、きっと私にも見せられないほど暗く厳しいものへと変わっているだろう。それをこうして二人の境目のように溶かすことができるなら。

貴方の居場所になりたい。

Special Thanks
you
(2018.11.18)


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