『雨が降っているから
地下にいても良いですか?』
そう言って一人のグリフィンドール生が訪ねてきたのは、彼女が入学して間もない頃だった。
そして今日も、エバンズは供を連れて地下へとやって来る。
「とうとう降り出したか」
「はい。しばらく止みそうにありません」
「君ももう卒業が近い。ここではなく、君にとっての地下を見つけるべき頃ではないか?」
「私にとっての地下、ですか」
半開きの扉から一歩こちらへ進み出て、彼女が首を傾げた。その腕に抱かれた白い長毛の猫も、チリンと鈴を鳴らして飼い主を真似る。
「卒業後も雨から隠れるためにここへ来る気ではなかろうな?」
「できることならそうしたいです」
「来るな」
絶えず猫を撫でながら、時折逃げ出そうとするその小さな体を引き止めて、エバンズが目を伏せた。躊躇うように薄く開いたままの唇が、再びゆっくりと形を変える。
「実を言うと、いつからか窓のないこの場所ではなく、スネイプ先生のお顔を見ると不安が和らいでいました。ですから私にとっての地下は――」
「気のせいだ」
言い切る前に彼女を遮断したにも関わらず、偽りではない笑みを浮かべるその表情が目に焼き付く。
「ふふ、冗談ですよ。ではいつもの地下牢教室をお借りしますね」
猫は世話しなく動かしていた耳をエバンズで止め、大きな欠伸で牙を見せる。彼女の守人を気取ってこちらを睨み付けたあと、フイと端から興味などなかったかのように彼女にすり寄った。
「くれぐれも猫を放つな」
「はい、先生」
彼女の腕の中で、猫が
大きく伸びをした。
Special Thanks
you
(2019.3.21)