「賭けをしましょう。
私があなたに惚れたなら、コネのすべてを使って、あなたに闇の魔術に対する防衛術の席を用意してあげる」
席に着くなりリリーが言った。
「ならば我輩が君に惚れたなら、目の前で跪いて世界にただ一つの指輪を差し出そう」
スネイプは前を向いたまま、勝利を確信した笑みを浮かべた。
「私がそれを望んでいるとでも?」
「望んでいるだろう。期待と恐怖が入り交じり声を震わせ君に懇願する無様な我輩の姿を」
「確かに、それはなかなかそそる光景」
深紅を引いたリリーの唇が三日月を真似た。
「君は昔から賭け事に弱い。何故こんな提案をするのか甚だ疑問だ」
「そんなに勘繰らないで。嫌いな子供に囲まれる仕事なんて他に楽しみでもないとやってられないでしょう。それに卒業して変わった私をあなたに見せてあげなきゃね」
大広間の職員席。その中央でゴブレットを小突く金属の呼び掛けが聞こえた。豪勢な玉座そのものの椅子を引いて、白髭の老人が立ち上がる。彼は口を噤み前方へと注目する生徒たちに微笑んで、大きく息を吸った。
「夕飯を掻き込む前に、新しい先生を紹介しておこう。今年から闇の魔術に対する防衛術を担当なさるリリー・エバンズ先生じゃ!」
リリーはその場で立ち上がり、挙げた片手で拍手に応える。そしてすぐに座り直すと、隣にいる無愛想な男との会話をひっそりと続けた。
「期限は1年」
リリーがスプーンを手に取った。
「君がホグワーツを退職するまで」
スネイプがフォークを握りしめた。
いざ勝負。
Special Thanks
you
(2019.3.20)