「ねぇ ダーリン」
しかしリリーの言葉に返ってくるものはなかった。組んだセブルスの腕を軽く引いても、そこに乗った頭は頑なに固定されたまま。管理された森の中央に建てられた屋敷を眺め、ようやく彼からため息だけが一つ。
「何度も謝ったじゃない。断りきれなかったの。お世話になった方だし、パートナー不在は格好がつかないでしょう?」
「これが『ちょっとした』パーティか?」
「それについては……嘘をついた。ごめんなさい」
今度は彼の口からため息に似た短い息が強く吐き出される。
「礼は、今夜、たっぷりと」
セブルスはゆっくりと、一語一語にありったけの不満を乗せた。そしてリリーを見て、ニヤリと笑う。
彼の中で今夜の私はどうなっているのだろうか。タイトなドレス姿の上を滑っていく彼の視線に私の奥がジリと焦がれる。
「行くぞ、リリー」
「優雅にエスコートしてちょうだい」
「なら他を当たるか?」
「妬いちゃうくせに」
「私を妬かせたいくせに」
クスクスと控えめな笑いで応酬を打ち切って、二人並んで屋敷へと歩く。近付くにつれ、ちらほらと他の参加者の姿が現れた。
「ねぇ、ダーリン」
辿り着いた会場で、セブルスは死んだグリンデローのような目をしていた。豪勢な中央のシャンデリアを見つめ、卒倒しそうな顔色で、少しでも人口密度の少ない場所を探る。それから数秒遅れてリリーに気付いた。彼は生気の籠らない声をやっとのことで喉奥から捻り出す。
「……なんだいハニー」
Special Thanks
you
(2019.3.19)