意地っ張り。
言葉一つで済むときにさえ、あなたは直接的な愛も謝罪も口にしない。頑なに唇を貼り付けて、一言でも漏らせば価値が下がるとでも思ってるみたい。
「あなたがあなた自身を愛せなくても、私が二人分あなたを愛すし、この先あなたが私を愛さなくなっても私は自分で二人分の愛を自分に注ぐんだと思う」
彼の部屋で黒革のソファに並んで座り、私はその肩へと頭を預けた。彼の膝へ伸ばした指を遊ばせて、足の付け根へと這わせていく。悪戯好きの手を捕らえるように、彼の手が重なった。
「私が君を思わぬ日はない」
「私の愛に過去はないの。あなたが初めて。そして最後になる。分散するはずの愛がここに集結しちゃってるに違いない」
捕らわれた手を反転させて、ぎゅっと握る。彼からも力が加わった。密着した手のひらが心地好い。
「だから、重かったら言って」
「君の重さなど私には及ばん」
身動ぐ彼に頭を起こした。至近距離で漆黒の瞳に心を抱かれ、視界に蓋をする。唇に彼を感じて、目を開けた。
「私はあなたを愛しすぎてる」
「私の愛は君と比べ物にならないくらいに重く、深い。そして果てしなく続いていく」
「どこまでも?」
「どこまでも。リリーが私を捨てようとしても離してやれない。私の方が重いだろう?」
目に見えないものを張り合って、きっとドラゴンだって笑ってる。勝ちを譲らないあなたが可愛くて、大切で、大好きで。
もう、本当に意地っ張りなんだから。
Special Thanks
you
(2019.3.11)