正直に言って、
リリーとセブルスに挟まれた三人でのお茶会は気を使う。自室の二人掛けソファに座って隣には笑顔のリリー。ローテーブルを挟んだ向かいにはいつもの固い表情を崩す様子のないセブルス。どちらか片方ずつならばそんなこともないのに、揃ってしまうとどうも空気を読まざるを得なくなる。読めたところで、今更どうにも動きにくい問題もあるけれど。
「リーマスは座ってて。今日は私が紅茶を淹れてあげる」
持ち込まれた茶葉で久々に飲むティーバッグ以外の紅茶は格別だった。傾けたカップの向こうに見える鋭い視線を無視すれば。これならばいっそ隣にセブルスがいた方が気が楽だろう。顔を上げればリリーの笑顔が気を和らげてくれるから。
「今日で幾つになるんだっけ?」
「私は君の二つ上だよ、リリー。分かってるだろう?」
「私はちょっと前から歳を取らないことにしたの。だから分からないわ」
ニッと悪戯な笑みを浮かべる彼女の表情は学生時代から変わらない。あの頃と同じ快活さを身に付けたまま、大人の女性としての落ち着きも持つ彼女は誰から見ても魅力的だ。ホグワーツに赴任して二人に再会した日、セブルスにそう同意を求めれば、きつい視線と嫌みが飛んできた。
「このチョコレートケーキ、美味しいよ。甘いだけじゃなくてしっかりと深みがある」
「でしょう?何たって私の手作りだから」
切り分けたリリーからのプレゼントを三人でつつく。あまり甘いものを好まないセブルスまでもが食べる姿に納得して、また一口をフォークに突き刺した。
「あ。リーマス、口元にクリームが付いてる」
「え、どこ?」
「右側」
擦った指は見当違いな場所を選んだらしく、彼女がクスクスと笑う。そしてごく自然に、私へとその手を伸ばした。
「リリー、彼は子供ではない。自分で拭える」
黙々とケーキと紅茶に舌鼓を打っていたセブルスが彼女の手を止める。
「ごめん、リーマス。つい弟たちへの癖で」
「ハンカチで拭くよ。あっ――」
「リリー、君も唇にクリームが付いてるぞ」
私の台詞を横から奪い取り、セブルスが腰を浮かせた。本人に拭わせない狡猾さで子細を伝えず、その俊敏さで手を伸ばす。あっという間にクリームは彼の指先へと移っていた。リリーはと言えば、見開いた目の中で視線を彷徨かせ、ほんのりと頬を染めている。
「セブルス、彼女も子供じゃないよ」
「子供だろう。歳は取らないことにしたと彼女自身が言った」
彼は拭ったクリームを舌先へと乗せて、ニヤリと笑った。これでも二人の間には何もないと言う。
今日は祝いと共にみんなが私の幸せを願ってくれた。けれど私としては、二人がお互いの気持ちを打ち明けあって、もっと
幸せになればいいと思う。
Special Thanks
you
(2019.3.11)