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「そういえば、ありがた迷惑なお節介連中がいた、なんて言ってたけど。あんた達のこと?」
「……ありがた迷惑……」
 苦々しげに呻いたルカを見て、少女は失笑する。
「だってそうでしょ? あんた達が手出したせいであいつらが余計に逆上したんじゃない。これが迷惑じゃなければなんだっていうの?」
 堰を切ったように、少女の口からは次々と怨言が溢れ出していく。こちらが口を挟む隙もにない勢いである。
「そっちは良いことしたつもりでさぞやいい気分だろうけど、こっちはたまったもんじゃないわよ。なんであんた達の自己満足のダシにされなきゃならないんだか。ふざけないでよね!」
 最後は殆ど叫ぶように言い切ると、少女は息をつき瞳を逸らした。暫しの間、その場を沈黙が支配する。あれだけ感情的だったルカも、黙りこくって俯いているだけだった。少々気味が悪いほどだ。ゼキアとしては下手に少女を刺激するよりその方がよかったのだが――奇妙に思っていると、ルカがようやくぽつりと声を漏らした。
「ごめん、ね」
 ――予想だにしなかった言葉に面食らったのは、何もゼキアだけではなかった。絶え間なく喋り続けていた口を噤み、少女は目を丸くする。その場しのぎではない、真摯な謝罪なのだと、直感的に解ってしまったから尚更だ。
「……謝って、それでどうしようっていうの? 許す気なんて無いし、あんた達は私達がどう思ってようと平気でしょ? どうせ私達のことゴミクズくらいにしか思ってないんだから!」
 一瞬、答えに窮したかに見えた少女だったが、すぐに口撃を再開した。しかしよく聞けば内容はこちらを攻めるものから己の境遇を卑下するものへと変わっており、少女の眦にはうっすらと涙が滲んでいた。
 ゼキアには、なんとなく彼女の心境が理解できるような気がした。謝られたからといって、解り合えるとでも思うのか。ならばこの怒りを、嘆きを、どこへぶつけろと言うのか、と。
「……とにかく、もう私達には関わらないで! 不愉快よ! じゃあね!」
 溢れそうになる滴を手で拭い、少女はそれだけ言い捨て駆け出そうとした。それを制したのはルカである。
「待って! ……名前、教えてもらえる?」
「……はぁ? あんた何聞いてたのよ。私、関わるなって言わなかった?」
 不機嫌を隠そうともせず、少女は思い切り顔をしかめた。だがルカは引き下がらない。
「ちゃんと聴いてたわよ、解ってる。ただ、知っておきたいだけだから」
 だからお願い、と懇願するルカを不躾に見返しながら、少女は面倒臭そうに口を開いた。
「……ホープよ」
「ホープ……そう、良い名前だわ」
「もういいでしょ。今度こそさよなら!」
 これ以上引き留められたくなかったのだろう、言い終えるかどうかのところで少女は既に駆け出し、あっという間に木々の向こうへと消えてしまった。
 伸ばしかけていた手を握りしめ、ルカは小さく呟く。
「……行っちゃった」


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