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 街の北門を抜けて更に北東、駆け足なら数刻程度の場所に、北の森はある。全力で街道を走り抜けたゼキア達は、程無く森の中へと足を踏み入れていた。追っている相手は既に先を行っている。森に入るまでに見付けられるのが最善だったが、どうやら相手は馬を使っているようだ。腐葉土に残った蹄の跡は、着実に森の深部へと向かっていた。
「ねぇ、ここまで来ると、かなり暗いのね」
「当たり前だ。だから危ないんだろうが」
 振り返らずに答えながら、ゼキアは周囲に細心の注意を払っていた。確かに、商人達を追う内に随分と深い場所まで来たように思う。森の入口付近は木々の隙間から陽光が注いでいたが、この辺りでは密集した木葉に殆ど遮られてしまっている。明かりを持たずともなんとか歩くことは出来たが、何も装備のない人間が立ち入るのはそろそろ限界だろう。これ以上の暗闇に進むのは、即ち“影”の餌食になることを意味する。 立ち並ぶ背の高い木々の圧迫感と森の静寂は、暗さと相まって物恐ろしさを増幅させた。
「まだ足跡が続いてる。どこまで奥に行ったのかしら……」
「さぁな」
 適当に返事を返しつつも、ゼキアは商人達もそう深い場所までは行かないだろうと踏んでいた。なにしろ、この森は魔物の巣窟だ。誰であろうと危険なことに変わりはない。彼らも、わざわざ“影”の食糧にはなりたくないだろう。ならば適当なところで捕らえた少女だけ置き去りにし、自分達は早々に退散。少女は身動きのとれない状態にしておけば、夜に“影”が勝手に処分してくれる。これが一番無難な流れである。勿論、強引にとことん奥まで進んだ可能性も無くはないが、彼らがそこまで危険を冒す理由はない筈だ。
「――ゼキア、あれ見て」
 唐突に、ルカが足を止めた。釣られてゼキアも立ち止まると、彼女は斜め前方を指差した。
「あそこ。人、よね?」
 そこに見えたのは朧気に光るいくつかの明かりと、それに照らされる人影だった。数は三人、恐らく男。そしてそれより大分小柄な人物がもう一人。
「……間違いなさそうだな」
 この距離と暗さでははっきりとした輪郭は掴めないが、恐らく商人達と連れ去られたウィッシュの姉だろう。どうやら追い付いたようだ。
「早く助けないと……!」
「待てっての。今行っても向こうを逆上させるだけだ。次に何するか解んねぇぞ」
 またもや先走りかけたルカを制し、ゼキアは語気を強めた。ここで強引に少女を助けたとしても、商人達が同じことをやらない可能性はない。ましてや相手は大層ご立腹である。彼らが立ち去った後密かに少女を助けた方が、禍根を残さずに済む。この場で少女に危害を加えようとするなら話は違ってくるが、あちらも森に長居はしたくないだろう。案の定、商人達は少女を縛って地面に転がすと、馬を引いて歩き始めた。


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