腰元に手を這わせると、レイラは抗うそぶりを見せはしたものの、強い抵抗は見られなかった。それをいいことに、俺は彼女の着ているネグリジェの裾から手を忍び込ませる。すべらかな膝小僧から、吸いつくような感触の太腿までを何度も撫で、丸い額に唇を押し当てる。
 下肢の付け根に指を這わせる。じわりと熱を溶かした息をついて、レイラが身じろぐ。それは先ほどまでのかたちばかりの抵抗などではなく、身体が受け入れる状態に入ったことを意味していた。
 あえかな吐息を漏らす唇に、そっと自分の唇で蓋をする。顎も、首筋も、腕もウエストも脚もどこもかしこも木製のマネキンのようにほっそりしていて、少し力を込めれば簡単に可愛い音を立てて折れてしまいそうだ。真白の肌が、にわかに熱を帯びて紅潮するそのさまを、しっかりと目で確認しながら、やわい肌に己の存在を刻みつける。
 ほっそりと丸いながらつんと尖る頤に噛みつくと、首を反らして感じ入るように身をよじる。
「ジェイミー」
 切れ切れの呼吸の隙間から漏れた俺の名前は、全身がそそけ立つような、ぞっとする色香を孕んでいた。知らず口の中に溜まっていた唾液を飲み干して、引きちぎるように彼女のまとっていたネグリジェを剥ぎ取った。
 彼女の指先にくちづけを落とす。ほっそりとした指の先端には、桜貝のような小さくて可愛らしい爪がちょんと乗っかっている。
 そのまま手指は俺の背中に回り、弱い力で引っ掻き始める。ジャケットを脱いだシャツ越しでも、その指の腹のふっくらとした感触が伝わって、これ以上ないと思っていた興奮が更に煽られて、心臓ではなく、頭の奥で何かが拍動するような錯覚に陥った。
 腕の中のレイラは、俺と同じ匂いがする。それはシャンプーや香水の人工的なものではなく、体臭、そう呼ばれるようなものだった。六年かけて俺が彼女の体臭を塗り替えたのだ。
 六年前、レイラはまだ幼い、初潮を迎えたばかりの時期特有の、こどもと大人どっちつかずの不安定な青い匂いをさせていた。それが今やすっかり、男を知った女の匂いをぷんぷんさせている。たとえるならば、花が枯れて実をつけたくだものの木だ。華やかな虫のたかる時期を抜けて鳥までも誘うそれ。
「レイラ、いい子だ」
 何の抵抗も引っかかりもなく俺を迎え入れた身体の内側に、マーキングするように擦りつける。すっかり頬を染めて俺の与える刺激に従順な反応を見せるレイラの髪の毛を梳いて、耳元で囁く。愛しているよ、と。
 レイラは何も答えない。ただ蕩けたベビーブルーの瞳で、茫洋とこちらを見つめるだけだ。

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