01
体育館に、シューズと床の擦れる音がきゅきゅっと響く。
「美麗!」
「うんっ!」
野乃花から受け取ったバスケットボールを、思い切ってシュートする。弧を描いたボールが飛んでいる途中でホイッスルが鳴り響き、次の瞬間それは、がん、とフレームに弾かれた。
「ちょっと! 今の、美麗が入れてたら逆転勝ちだったのに!」
「ご、ごめん……」
チームメイトから、けっこう本気で責められて、私は曖昧に笑ってあとずさる。そうは言うけれど、あの距離から入ったら奇跡だ、私の運動神経やシュート精度からすれば。
応援に来てくれていたクラスメイトや先輩たちが、がやがやと騒ぎ出し、皆自分の競技に戻っていく。
今日は、球技大会だ。各クラスの男女に分かれて、それぞれバスケ、サッカー、バレーを選択して競技をおこなう。一年から三年のクラスが、それぞれランダムに組み合わさってグループになり、総合優勝を狙うものである。
私と野乃花はバスケを選んでいて、そして今の試合に勝っていれば、ひらたく言えば私があのシュートを決めていれば、一年の部では一位だったのだ。私のせいで、二位になった。
あとはもう、二、三年の同じグループのバスケの試合でいい成績を残していただき、サッカーとバレーのほうをがんばってもらうしかない。
ひたすら平謝りしていると、ぽんっと頭に手が置かれた。
「お疲れ、上谷」
「篠宮先輩……」
「惜しかったな、あとちょっとで入ってた。皆も、お疲れ様」
「篠宮先輩、応援行きます!」
同じグループの二年生である篠宮先輩は、もちろんサッカーを選択している。先輩が来たとたん、チームメイトは現金なことに目の色を変えて騒ぎ立てはじめた。
「おう、ありがとな」
ひらひらと手を振って、篠宮先輩が体育館をあとにする。
「やっぱり、格好いいよねえ」
「美麗さ、ほんとに付き合ってないの?」
「付き合ってるわけないじゃない……」
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