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ついに迎えた、千秋楽の日。
特に誰かと一緒に観に行く、なんて考えていなかった為、もちろん一人で観劇。

初めは、やはりきちんと作られた舞台セットに見入る。
次に、キャラクターに沿って作られているオリジナルの衣装を着た、劇団員の面々。
主役だから当然冒頭から登場している、皇くん扮するアリババを見て、まずは一つ感動した。
まぁ皇くんは芸能人として様々なドラマ、映画でこれまでにたくさんのキャラクターを見てきたが、今回は違う。
何と言うか、上手く言い表せられないけど、アリババは“彼自身”だと思った。
キャラクターとして芝居をしているけれど、何だかいつもの皇くん自身を見ているような気がして、少し新鮮。
二つ目の感動は、表情豊かな皇くんの姿。
確かに学校でも普段から友達と話して笑ったり、なんて顔は見てるけど、舞台上ではそうじゃない。
学校やテレビで見ているよりも、ずっと、ずっと楽しそうだった。
コメディ劇だからというのもあるが、ギャグのシーンでもシリアスなシーンでも、彼の瞳は爛々と輝いている。
きっと、あの皇くんが“友達”や“共演者”の枠を超えた“仲間”達と最高の芝居を繰り広げているからこその姿だ。
心の底から楽しんでいる。皇くんにとっては“かけがえのないひと時”。
私の目には、皇くんの姿は終始そのように映っていた。




「ありがとうございました!!」


劇団員の礼に対し、客は拍手喝采。そして、舞台の幕が下りる。
私は“劇団員としての姿の皇くん”を勉強の為観に来ていたのに、いつの間にか演劇の世界観の中にのめり込み、周りの客達と同じように感動の渦に呑み込まれていた。
最後の最後までただひたすらに皇くんを見つめていたら、幕と劇団員の顔が重なる直前、彼の輝く瞳とバッチリ目が合ってしまった。ような気がした。

――あぁ、皇くんに、直接感想を述べたい。もう一度、面と向かって話がしたい。
そんな熱い気持ちが体を駆け巡り、そうだ、楽屋に挨拶に行ってしまおうか。なんて考えてしまったけれど、彼だってこの感動と興奮の余韻に浸りたいはずだ。
そう思い、なかなか引かない客の間を掻き分けて劇場の外へ出た。

私自身、未だ興奮冷めやらぬ状態だ。
とても素敵だった。もう一度、観たい。もう一度、皇くんの楽しそうに輝くあの姿を観ることが出来れば。


「……また、舞台上に立ってくれるよね。きっと」


清々しい風を浴び髪をなびかせながら、一人呟いた。


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