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とある土曜日、私はある“勉強”の為、ビロードウェイに来ていた。
休日なだけあって、あちこちでいわゆる“ストリートACT”というものをやっていたり、劇団員自らビラ配りをしていた。

気になる公演があれば見てみようと思っていた私は、所々でストリートACTを見たり、様々な劇団のチラシをもらったりしていたが、ふと思わず道のど真ん中で足を止めてしまった。


「……皇くん、だ」


10メートル程先のとある劇場に、皇くんが入っていく所を目撃してしまった。
劇場、もとい、あれは劇団員が生活している“団員寮”だ。
自分の目を疑ってしまったが、あの髪の色は間違いない。本人だった。
劇場に入っていくならまだしも、なぜ団員寮に入っていったのだろうか。
しかも、さも自宅かのように、何の挨拶もなくすんなりと入っていってしまった。
これでは、まるで、皇くんがあの団員寮に住んでいるかのようじゃないか。


「まさか……いや、きっと友達とかがあの劇団にいるんだ。多分」


あの有名芸能人が、まさか、劇団に所属しているなんて。


「MANKAIカンパニー……最近では聞いたことない名前」


何かの間違い、いや、見間違い。
そう頭では考えつつも、やっぱり気になってしまい、つい劇場の目の前まで来てしまった。
丁度ビラ配りを開始する所だったようで、近くにいた団員の一人に声をかけられる。


「あ、よかったらどうぞ!MANKAIカンパニーです!夏組の旗揚げ公演、ぜひ観に来てください!」
「はぁ、どうも……夏組……」


同い年くらいの男の子に、次回公演のチラシをもらった。
『Water me!』と題してあるその紙面に、皇くんの名前はない。
夏組、というのは、あの某有名な女性歌劇団のように、チーム別に公演をやっているんだろうか。

それにしても、この人……とても純粋そうなこの男の子も、ひょっとして、舞台の上に立ったんだろうか。
この人は、一体どんな役で、どんな風に、舞台上に立ったのか。


「……観に、来ます。頑張ってください」
「えっ!本当ですか!?ありがとうございます!ご来館、お待ちしてます!」


同い年くらいの人達が立つ舞台。演劇。
一度観てみると、案外皆お芝居が上手で、面白くって、感動して……
ハマってしまうかもしれない。
完全な興味本位だけど、どうしても気になって、観に行くと返事をしてしまった。



もし、もしもの話だけど……この公演で、夏組の団員として、皇くんが舞台上に立ったら。
どんな風に、役に“ハマり込む”んだろう。
もらったチラシと期待を胸に、その日は帰路へついた。


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