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私のクラスには、皇天馬がいる。
かっこよくて、どんな役でも演じられる、芸能人だ。
クラス内はもちろん、学校中の人気者。
もちろん、お茶の間の皆にも。

私は、そんな皇くんに憧れていた。
ちょっと世間知らずな所とかあるみたいだけど、そんなことより、普段から堂々としている姿が、気に入っている。

特に、役を演じている時。
セリフは絶対に間違えないし、しっかりとなりきっている。
本当、尊敬の念を感じる人物である。

一方の私は、そんな皇くんと同じクラスではあるけど、全く違って、真逆の世界にいるような人間。
友達がいないとか、イジめられているとか、そういうのではないけど、ごく一般的な、控えめで大人しい高校生。
……地味、とはよく言われる。

こんな私だけど、皇くんに憧れている理由はちゃんとある。
別に、あんな人になりたいってわけじゃないけど、私は皇くんの“演じ方”に興味があった。
役をよく理解して、身も心もその役そのままの状態にする。
簡単そうに見えるけど、決してこれは簡単ではないのだ。
それを、皇くんはきちんと、完璧にこなしているんだから、すごい。

その彼を、見習いたい。
同じクラスになってから、ずっとそう思っている。


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