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ハッピーエンド


※魔王ED





 面白い、と、悪魔の王は笑った。面白い。

 一人の少女の中、輝かしい彼女の魂の奥の奥、封じ込められていた魔王は、そこで少女の姿を見ていた。強く、ときにもろく、戦いに巻き込まれて輝きを失っていった少女の姿を。
 少女もまた、魔王の存在には気が付いているようだった。初めからか、途中からかはわからない。戦闘のさなか、彼女は何度か、自らの内に潜む魔王のことを考えていた。

 だからある日、少女が話し掛けてきたときに、魔王は笑ったのだ。魂の輝きはほとんど消え去り、暗闇の中のろうそくの火のように揺らめいていた。
 戦いの中で大切な人たちを守れず、自分の無力さを実感し、悩み、それでもまだ大切な人たちの傷を減らすことのできない少女。魔王に話し掛けたときの彼女の魂は少しだけ強く輝いた。

「あんたはそろそろ、あたしの体を乗っ取ろうとしてる頃だよね」

 魔王はやはり、笑った。

「でも、なかなかそうしないのは、あたしが抵抗したら勝ち目があるかわからないからでしょ?」

 少女は召喚術で傷を治しながら、存在を確信している魔王に語り掛ける。

「いいよ。あげる。あたしの体、あんたにあげる」

 少女は癒したばかりの血濡れた手で胸を押さえた。
 魅魔の宝玉を手にしたバノッサを止められない自分と、偽りのない笑顔を見せてくれたソルや、リィンバウムで出会った仲間たちを守りたいと願う自分。

「あたしじゃ、世界を……バノッサを救うことなんかできない。仲間を守ることもできないあたしじゃ、漫画みたいなハッピーエンドは迎えられないから。だから……あたしの中の魔王! この体はあげるから、世界もバノッサもみんな、みんな、救ってよ!」

 面白い、と、悪魔の王は笑った。

 体を受け渡すということが何を意味するのか、少女のことを守ろうとしている少年のことはどうするのか。第一、自分が約束を守るとは限らない。裏切らない可能性がないわけではないのに、少女はその身を差し出すと言う。

「ソルのことは信じてる。それに、あたしがいなくなってもさ、それって元の世界に戻るだけじゃん?」

 だってあたしはこの世界の住人じゃないんだから。

 数ある中で選択を誤り、おごっていた自分を知りながら、守るための力を発揮できなかった少女の瞳は淀む。
 少しさびしそうに笑うと、少女は魔王を受け入れた。少女を受け入れていた魔王をやっと、受け入れた。


 さいごのさいごに、たいせつなあのひとのこえをききながら。






超絶自己解釈、魔王EDです。
魔王EDはもしかしたら、疲れ切って、魔王に頼るしか他に方法がないと考えた主人公のエンディングなのかもしれないなーと。乗っ取られたんじゃなくて。
そんなこと知るよしもないパートナーは諦めきれない→魔王を睨み付ける、というのを想像するとやっとソルナツになります。
魔王EDもパートナーEDもわりと色々な解釈ができるんじゃないかなーと思います。




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