カウンターで笑い声が上がる。首を伸ばすと、ルーシィとミラジェーンが楽しそうに会話しているのが見えた。
ナツはいつものことに興味を失ったが、向かいに座ったマックスはそうではなかったようだ。顔ごと視線を向けたまま、ぽつりと呟く。
「ルーシィって最近可愛くなったよな」
「あ?」
「いや、元から可愛かったけど、特に」
ナツはもう一度目を向けてみた。いつも通りのルーシィが、そこに居る。
「変わんねえと思うけど」
「お前はいつも近くに居るからな」
マックスはナツの返答など初めからどうでも良かったかのように、ルーシィの後姿を眺めていた。数秒後、うん、と頷く。
「また写真撮らせてもらおう」
「写真?何すんだ?」
「売るんだよ」
何を言ってんだと言わんばかりに、マックスは瞬きを繰り返した。きょろきょろと辺りを見回してから、「お前知らないの?」と声を低める。
「ルーシィってグラビアの仕事来ないだろ?」
「ん?ああ、そんなこと嘆いてたな」
「ソーサラーでは過激すぎて、て声かからなくなったけどな。でも他のとこからは来てるんだよ」
「え?でも」
「ルーシィに話行く前に、ギルドで断ってるんだ」
「断ってるって…なんで?」
にやり、とマックスは口元を歪めた。右手の親指と人差し指で輪を作る。
「雑誌では出回らないってレア度が高いだろ。ギルド限定で売れば良い値が付くんだ、これが」
「……ルーシィの写真なんて売れんのか?」
「バカ売れ」
一音ずつ区切って、マックスはぐ、と拳を握った。
「ルーシィとエルザ、ウェンディは稼ぎ頭だからな」
「ほー」
ナツは適当に相槌を打った。なんだかあまり面白くない。
「ルーシィの写真なんてなあ」
「お前の目が肥えすぎてるんだよ」
マックスが肩を竦めた。懐から茶色い封筒を取り出して、中を覗く。
「これなんてどうだよ。可愛いだろ?」
ぴ、と一枚取り出して見せてきたのは、水着の写真だった。右上の端にビーチボールらしき物が映っていて、それを受け止めようとしている。
ナツは目を眇めた。
「わかんね」
「うわ、枯れてるな。さすがナツだ」
「あん?」
「まあいいや、それやるよ。口止め料な」
「は?」
「ルーシィには、グラビア断ってる話するなよ」
「写真売ってんのは良いのかよ」
「それは知ってるはずだぜ」
マックスは悪びれずに言って、元通り封筒をしまった。
ナツは残された写真に目を落としてみた。二つに括った金髪、滑らかな肌、無邪気な笑顔。ナツの良く知るルーシィが、そこで時間を止めている。
「これ、そんな前の写真じゃねえよなあ」
「ん?どうかしたのか?」
「乳、でかくなってる」
ぴ、とカウンターを指差したナツに、マックスがごくりと喉を鳴らした。