ぎゅ、と――掻き抱いた身体は、まるでナツの為に作られているかのようだった。柔らかいせいだろうが、隙間なくぴたりと合わさって心地が良い。
その温もりに一瞬目を閉じるも、ナツは自分の行いにぎくりとして口を引き結んだ。

突然抱き締めたりなんかしたら、ルーシィは怒る。きっと怒る。

殴られるか蹴られるか踏まれるか打たれるか――。
しかし覚悟したそれは一向にやってこなかった。

暴れ……ない?

どきどき、とルーシィの代わりにナツの心臓が暴れている。それは決して、彼女の報復を恐れているわけではなく。
ハッピーがくふ、と笑った。

「ナツ、真っ赤だよ」
「う、うっせぇ!キノコのせいだろ!」
「え?」
「ちょ、こっち見んな」

ルーシィが動かそうとした頭を、ぐい、と肩口に押し付ける。指にさらりと、金糸が絡んだ。
再び落ちた沈黙を埋めるように腰を引き寄せると、彼女は一瞬震えて、ゆるりと力を抜いた。押し殺したような息遣いだけが間近で聴こえる。
何か、言った方が良いのだろうか。ナツは目を泳がせながら必死に頭を巡らせた。

「ルーシィ」
「う、うん」
「その、えっと、だから……ルーシィ」
「うん」
「好、」
「何をしてんのか訊いても良いか?」

突然背後から声が投げられた。

「いっ!?」

満足に反応も出来なかったナツは、ルーシィに突き飛ばされて尻餅をついた。
振り仰ぐと、口元に絵に描いたようなにやにや笑いを貼り付けた、グレイ。

「いやぁ、先陣切って行ったと思ったら……お前らいつの間にそういう関係になったんだよ?」
「ち、ちげぇよ!キノコの胞子吸っちまって、それで……」

症状に心当たりがないため、段々と尻すぼみになっていく。
グレイは目を見開いた。ぷ、と噴き出す。

「だっせ」
「う、うっせぇな!」
「お前いくつよ?」
「は?」

きょとん、としたナツに、グレイはバカにしたような顔を向けた。

「ダケ茸の胞子は10歳未満の子供にしか効かねぇんだってよ。精神年齢なら当てはまってんだろうけどよ」
「へ」
「お前らろくに説明も受けずに走ってったもんな。……残念だったな?抱きつく口実に出来なくて」
「だっ……!?」
「ナツ、オイラセクハラは良くないと思うんだ」
「おまっ、元はと言えばハッピーがあんなこと言うからじゃねぇか!」

ルーシィの顔は見れそうにない。
自身の想いを吐露しそうになったことを忘れたくて、ナツは必死にハッピーとグレイに牙を剥いた。






良かった、オイラ吸わなくて。


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