きのこ





『流行病!?――

依頼状を読み上げたときのルーシィは、面白いほど嫌そうだった。
ナツは思い出してぷふ、と笑った。彼女は何も言っていないのに察したのか、服の上から抓ってくる。その細い指先を掴まえて、彼は依頼主に目を向けた。

「流行病じゃねえって?」
「はい」

落ち着いた様子の中年男が、ナツの言葉に頷いた。
村の通りの真ん中。興味深そうに集まってきた人々が、そっと二人の少年を場に押し出す。

「この通りです」
「これは……」

エルザが眉間に皺を寄せた。
少年達はがっしりと抱き合っていた。それはもう、瞳をピンク色に染めて。

「好きだよ」
「僕の方が好きだよ」
「えーと……」

グレイが焦点の合っていない目を依頼主に向けた。

「ダケ茸と言いまして。高濃度の胞子を吸い込むとその直後に見た人を、抱きつきたくなるほど好きになるんです」
「ほ、ほお……」
「大丈夫なの、これ?」
「胞子が体内で完全に消化されれば元に戻ります。とはいえ、これ以上の被害は避けたい」

男は親指と人差し指を使って、弧を作った。

「ダケ茸はこれくらいの大きさで、奇抜なピンク色をしています。あなた方には、それを」
「駆除して欲しい、と。そういうことだな」
「はい。そしてもう二度と生えないように処理していただきたい」
「処理?」
「燃やせば良いよな?」
「凍らせるのも有効だろう。ナツ、グレイ、頼むぞ。今回はお前達がメインだ」

エルザが頷いたと同時に、ナツはハッピーに声をかけた。

「よっし、行くぞ!」
「あいさ!」
「おい、お前達!」
「え、ちょっと!?」

慌てたようにルーシィが叫ぶ。それを耳に入れてから、ナツは自分が彼女の手を握ったままだと気付いた。少しだけ、足を緩めてやる。

「も、もっとゆっくり歩いて!」

喚きながらも付いて来る彼女が楽しくて、ナツはばれないようにこっそりと笑った。




「みっけ!」
「うわ、凄い……!」

林立する木々の間に、桃色の絨毯が敷かれているようだった。一見して、キノコだとは思えない。
ナツはルーシィが唖然と口を開けるのを見て、にやりと笑った。

「飛び込んでみたくねえ?」
「はい?ちょ、こら!?押すな!」
「ナツ、ルーシィが胞子吸っちゃうよ」
「ちぇ」
「ちぇ、じゃない!」

イタズラを実行出来なくて、ナツは口を尖らせた。ハッピーがしたり顔で腕を組む。

「胞子吸わせて抱きつかせようとか、卑怯だよ」
「そっ、そんなんじゃねえ!」

慌てて窺うも、ルーシィは聞いていなかった。恐る恐るキノコ群に近付いて、頷く。

「これに間違いないわよね。奇抜なピンク色だし、大きさもあの人が言っていたのと同じだし」
「だね」
「よし、下がってろ」

これだけ密集していれば一気に焼き払える。






きのこのこのこ……の続きは「元気の子」を思い浮かべますか?それとも「たぬきの子」ですか?


次へ 戻る
main
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -