薄々、そうじゃないのかと――いや、そうだと、気付いてはいたのかもしれない。しかしそれを、わざわざ確認しようとは思っていなかった。
なぜなら、そんなわけはない、と思っていたから。信じていたから。
――ナツを。
「でも、許しちゃうんでしょ?」
「それは…まあ。だってあたしが許さないと、どうしようもないし」
「ふっふーん?仲良いんだからぁ」
「ちょ、止めてよ、レビィちゃん」
ルーシィが眉を下げる。思ってもいないことを言われたかのように、彼女の頬は赤く染まった。
「そんなんじゃないってば」
はっきりと告げられる言葉。羞恥に耐えるような表情。
これは、恐らく。いや、間違いなく。
彼女の反応を余すところなく眺めてから、リサーナは席を立った。
「ん?どこ行くの?リサーナ」
「ちょっとね」
軽く二人に手を振って、ギルドを見回す。目的の桜色は、見付けるまでもなく視界で大暴れしていた。
「ナツ!」
「今良いとこなんだ、邪魔すんな!」
「大事な話なんだけど」
「あ?」
にこりと――どういう顔をして良いのかわからなかったので、故意に今の姉に似せた笑顔を浮かべてみる。
ナツはぎょっとしたように固まった。
「な、何か企んでんのか?」
「ううん、少しだけ」
「どっちだよ!?」
「どっちでも良いよ。ちょっと来て」
親指でギルドの出入り口を示す。彼は今まで取っ組み合いの喧嘩をしていたはずのグレイに、助けを求めるような視線を送った。グレイはグレイで、戦地に友を送り出すような顔をする。
「骨は拾ってやんねえぞ」
「う…」
頬がひく、と引き攣る感覚がした。
「大丈夫だから!」
「ほ、ホントだな?信じるからな!」
ナツはそれでも怯えた様子だった。エドラスの彼が一瞬だぶって見えて、余計に口が重くなる。
リサーナはやっぱり止めておこうかと彼から目を逸らした。そこで、さっきまで和気藹々と話していたルーシィとレビィが、こちらを見ているのに気付く。
「…ナツ」
「お、おう?」
「どこか…湖でも行こっか」
他の人に聞かれるのはまずい。
こちらを追ってくる二つの視線を感じながら、リサーナは彼とギルドを出た。
「で…なんだよ?」
湖のほとりまでやってきて、リサーナは緊張した様子のナツを振り向いた。
「あの、ね」
「ん」
「ナツ、前にさ……私に」
リサーナは彼を見つめた。返ってくる視線は真っ直ぐで、昔から変わらない。
もしかしたら、傷付けるかもしれない。それでも、このまま、というわけにはいかない――。
覚悟を決めて、彼女は口を動かした。
「『ルーシィと付き合ってる』って、言ったよね?」