ナツの目から緊張が解けた。

「おう。付き合ってるぞ」

あっさりと、返答が得られる。リサーナは重い頭が下がらないように首に力を入れた。

「あのさ、ナツ」
「ん」
「言いにくいんだけど。ものすっごく――言いにくいんだけどね」
「なんだよ」
「勘違い、じゃないかな」
「はあ?」

ナツは理解できない、という顔をした。

「勘違いって、何が?」
「だから、その。ルーシィと付き合ってるって」
「え?何がだ?」

繰り返して、ナツは目を瞬かせている。
予想通りだ。
彼は自分がルーシィと恋人関係にあると誤解している。そしてそれを、全く疑っていない。
彼がそんな嘘を吐く理由はない。そうじゃないかとは思っていたが。
リサーナは彼が不憫に思えてそっと目を背けた。

「ルーシィ…ナツのこと、そんな風に思ってないみたいなんだけど」
「は、あ?」

眉がくにゃ、と歪む。リサーナは慌てて声のトーンを上げた。

「や、あの。そんな風に見えるんだけどなあって」
「そんなはずねえよ」

半ば呆然とした様子で、ナツは拳を握った。

「だって、家に行くし!」
「う、うん?」
「お前昔言ってたじゃねえか、家で二人きりになるのは恋人だって」
「……言ったっけ」
「言った!ルーシィだって、オレんち来るし!」
「それ……ハッピー、居ない?」
「ハッピーは数に入らないだろ!」

がくりと肩が落ちる。疲れた心地を抱えながら、リサーナは口をへの字に結んだナツを見据えた。

「気持ちは伝えたの?」
「へ?」
「ルーシィに『好き』って言った?」
「は…い、言ってねえけど」

それは彼も思うところがあったのか、もごもごと言いよどんだ。

「でも、わかるだろ。ルーシィだってオレのこと、す、好き、だろうし」

実際そうだろうとは思った。だからこそ、リサーナも今までナツの言うことを素直に受け入れてきたのだ。
しかし今ここで彼女の気持ちを代弁しても意味はない。リサーナは薄く溜め息を吐いた。

「私以外に、誰かに言った?」
「いあ……お前、オレのことうぶだとかなんだとかバカにしてやがったから」

「だから報告、しておこうと思って」と呟くようにして声を落としながら、ナツはきゅう、と眉間に皺を寄せた。

「付き合ってんじゃねえの?」
「うーん…ルーシィにそのつもりはないみたい」
「でも、料理だって食わせてくれるし、オレらが入りやすいよう鍵だって開けててくれるし」
「え、不用心じゃない?」
「二階の窓だから大丈夫だろ」
「窓から入ってるの!?それで恋人なわけないよ!」
「で、でも!あいつんちにオレ用の食器だって歯ブラシだってあるし!」

ナツは段々と自信が戻ってきたのか、力強く頷いた。

「やっぱ、勘違いなんかじゃねえよ。付き合ってる!」
「まあ、歯ブラシだけはそれっぽいかな」
「見てろよ!」
「へ?ちょっと、ナツ!?」

ナツは踵を返すと、一目散に走り出した。来た道を戻るようにして、土煙を上げていく。
リサーナは呆気に取られた一瞬後、慌てて彼を追いかけた。






オイラ、ノーカウント!?


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