「なに話してんの?」

何も知らないルーシィは呑気そうに首を傾げている。
ジュビアはレビィと顔を見合わせた。たっぷりと間を取って、答えてやる。

「とっても良いお話です」
「え、なになに?」
「ルーちゃぁん?」

身を乗り出してきたルーシィの腕を、レビィががっしりと掴んだ。嫌な予感がする、とばかりに、ルーシィの頬が引き攣る。

「な、なにかな?」

ジュビアは彼女の瞳を覗き込むように見上げた。

「ルーシィはナツさんのこと、どう思っているんです?正直なところ」

いつも一緒に居て仲睦まじいこの二人は、一見すると両想いだ。しかしジュビアには、ルーシィは時折グレイにアプローチしているのではないかと思えることがある。もっとも、彼女はグレイを取り巻く女性全員にこの疑いをかけているのだが。
ルーシィは目を見開いた。引こうとする腕をレビィが予想通りとばかりに繋ぎとめる。

「は…はあ!?ま、待って待って!いきなり何!?」
「んふふ、今ね、ナツがいよいよルーちゃんに告白しそうだって話してたの」
「へ…ちょっ、なに!?なにそれ!?」

真っ赤というよりも赤い場合、どう表現したら良いのか――咄嗟に見付けられず、ジュビアは指摘しようとした口を閉じた。代わりに先程の問いを、もう一度ぶつけてみる。

「どう思っています?」
「だっ、そっ…そういうんじゃない!ナツだってそんなわけ…てか、どうしてそんな話になんのよ!?」

燃え尽きそうなほど赤いルーシィが涙目で二人を睨む。全く迫力のない彼女に、ジュビアはレビィと一緒に、ナツの奇妙な行動について報告した。見たままの事実に、それから予想されるグレイとの会話内容まで。
終始笑みを堪えようとしなかったレビィが、説明を終えてようやくルーシィの腕を放した。

「ナツがあんな真剣な顔して、ねーえ?」
「うぅ…で、でも、まだ決まったわけじゃ」
「ルーシィには聞かれたくない話、ですよ」
「ねね、ナツが告白してきたらどうするの?」
「どっ、どどど、どうって!?」
「へ・ん・じ」

もう声も出ないといった風情のルーシィに、レビィが鼻先で人差し指を揺らす。

「付き合う?それとも付き合っちゃう?」
「つっ…選択肢増やして!」
「断るんですか?」

ジュビアが目を丸くすると、ルーシィはうぅ、と呻いた。

「わ、わかんない、けど」

ふらふらと、二人の向かいに腰を下ろそうとする。
ジュビアはそれを厳しい声で制した。

「ここに座っちゃダメです。一人で居なきゃ」
「え?」

ぽかん、と口を開けたルーシィに、レビィが手を打った。

「あーそっか。私たちと一緒じゃ、ナツも声かけにくいもんね」
「ちょ、ちょっと、待ってよ!だからまだそう決まったわけじゃないでしょ!?」

有無を言わさず、ジュビアとレビィはルーシィを回れ右させて、その背を押した。

「え、え、やだ、ここに居させて!」
「ナツさん、可哀想」
「ルーちゃん、がんばれ!」
「が、がんばれって言われても…!」

勢いに流されてたたらを踏んだルーシィが、顔を上げてぴたりと動きを止める。

桜髪の魔導士が、下唇を噛み締めてそこに居た。






すれ違いの舞台裏。


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