首を捻るナツの前で、ルーシィが慌てたように身を乗り出してきた。

「だっ、だからって、家に入られるのは迷惑してるんだからね!」
「うん。オレ、ルーシィんち行きたい」
「聞いてる!?」
「オイラも行くー!」
「ちょ、えええ!?」

ナツはもう一度、自分の気持ちを真っ直ぐ口にした。大きな瞳を覗き込むようにして、言う。

「ルーシィんち、行きたい」

ルーシィがくっ、と喉を鳴らした。
返答を待たずに、ナツは念押しする。

「だから入るからな」
「あい!オイラもー!」

ハッピーの元気な声に、がくり、とルーシィの肩と頭が落ちる。「ああ、やっぱり変わらないのね」とごちた彼女の言葉に、ナツは頷いた。

そうだ、変わらない。ずっと。

これからも自分とハッピーは、ルーシィの家で幸せな時間を過ごす。
相棒と笑い合って、ふと、彼の悟ったような顔が思い出された。

『ずっとこのままなんて、無理だよ』
『彼氏できたり結婚したり――』

思い返しても呼吸が止まる。ナツはまだ項垂れたままの、ルーシィの肩を掴んだ。

「へ?」
「彼氏作るなよ」
「は?」
「そんなんイヤだからな」

は、の口で、ルーシィが固まった。静かに、しかし速やかに、顔が赤くなっていく。
ナツは口を尖らせた。

「怒んなよ。短気だな」
「おこっ…!?て、あんたに短気とか言われたくないからね!?」
「ナツ、ルーシィは怒ってるんじゃなくて照れ、」
「踏むわよ、猫ちゃん!」

ルーシィがしたのは忠告ではなく宣言だったようで、ハッピーは潰れて「ふぎゅ」と鳴いた。
ナツは逸れてしまった会話を戻そうと、ルーシィの瞳を追った。

「彼氏作んなよ。わかったか?」
「なっ、なんなのよ、それ!?」
「そんなんで家追い出されんの、まっぴらだからな」

今回の依頼でナツが覚えたのは、家に侵入したのが誰かわからなければルーシィは怯えるだろうことと、ルーシィに恋人が出来たら侵入することができなくなるという危機感だった。前者は心配要らないが、後者は大丈夫とは言えない。今のうちに阻止しておかなければ。
ルーシィは「ああ、そういうこと…」と呟いて目を眇めた。

「あのねえ……あたしだって、いつかはね?」
「要らねって」
「要る要らないはあたしが決める!」
「んなの、考えただけで…えーと、なんつーんだっけ、こういうの。ああそうだ、おぞましい」
「そんなに!?」

ひくりと頬を引き攣らせたルーシィは、まだ承知しそうにない。ナツは面倒くさくなって首を回した。

「つか、そんなもん作ってどうすんだよ」
「ど、どうって。そりゃ…デートする、とか」
「具体的にはぁ?」
「えっと。カフェとか公園とか、劇場行ったり…」
「オレと行けばいいだろ」
「まあ、そうだけど」

ひょい、とルーシィは肩を竦めてみせた。

沈黙が落ちる。

「――ん?」
「じゃあ良いんじゃねえか」

得られた同意に、ナツは頷いた。なんだかおかしなことになった気がするのだが、深くは考えず、に、と笑ってやる。

「オレが居れば、そんなもん要らねえだろ?」
「な、え」
「だろ?」
「う」
「だ、ろ?」
「う…うん…」

かあ、と赤く染まるルーシィの足元で、

「ごちそうさま。オイラお腹いっぱいだよ」

ハッピーがくふ、と笑って腹を擦った。






ただいまの決まり手は押し切りー、押し切りでナツの勝ちー。
お付き合いありがとうございます!


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