『ル"ゥウウウウシィイイイ、ハァア"アアトフィルィイァァアア"アア!!!』

そう、これが巻き舌っていうのよね。

歓声の渦巻く中を歩きながら、ルーシィはぼんやりとそんなことを思った。
向かう先には、でかでかと設えられたリングと、悠然とロープに凭れ掛かるナツ。
にやりと笑って、上がって来いよ、と言わんばかりに顎で挑発してくる。
ルーシィはぐ、と拳を握った。

「負けないわよ」

これから、本気で――ナツと戦う。





まつり








「はい?今、なんて?」
「ですから、戦ってもらいたいのです」
「オレとルーシィに?」

ぱかん、と口が開いたナツを見て、今自分も同じ顔をしているのだろうと思った。
ここはマグノリアから東、ボスコとの境界にある小さな宿場町。今回の依頼は祭を盛り上げるのを手伝ってもらいたい、とのことだったのだが。
祭の簡易事務所らしきプレハブ小屋で、ルーシィは困惑を抱えたまま、依頼人の青年――祭の実行委員長だと言っていた――に目を戻した。

「えと…それはどういう?」
「ああ、もちろん、余興ですよ。本当は、最終日の特設ステージにゲストとして参加してもらい、魔法を披露してもらおうかと思っていたのですが」

彼はちらり、とナツを見て、続けた。

「あの有名な火竜さんが来てくださったのなら、実戦の方が盛り上がるでしょう?」
「でもナツとルーシィじゃ、勝負にならないよ」

ハッピーの言葉にややむっとするも、ルーシィは頷いた。超近距離戦闘タイプのナツに対し、星霊魔導士はあまりにも分が悪い。
男性はにこりと笑った。

「あくまで余興ですから」
「手ぇ抜けってのか?」
「そこはお任せします。それに、そんな必要はないかもしれませんよ」
「ん?」
「これを見てください」

がさり、と取り出したのは数枚の紙だった。何か図面のようなものが引かれている。

「五日後の最終日までに、このリングを設置します」
「リング?」
「ええ。魔水晶を使って、お二人の魔力をサポートします」
「サポート?それって、オレらの魔力を増やすってことか?」
「いいえ。増やす、ではなく供給する形になります」
「んあ?」
「魔力切れの心配が無くなるってことね?」

頷いた男性に、ハッピーが不思議そうに首を傾げた。

「でも、何のために?」
「祭のメインイベントですから、あっという間に終わってしまっては困るんですよ」

その『メインイベント』という響きが、少し引っかかった。さっきはステージ参加の予定だった、と言っていたはず。
男性は喜びも露わに、ナツに握手を求めた。

「いやあ、本当、来てくださって嬉しいですよ。火竜さんほど有名な方なら、他の委員も納得します」
「おっしゃ、任せとけ!」

その様子を見て、ルーシィはこっそり息を吐いた。

戦わせる気満々だったんじゃない。

考えてみれば、二人以上限定での依頼だった。このリングの図面といい、準備が良過ぎる。恐らく、計画はあったものの、他の委員に反対されていたのだろう。
わかっていたならグレイを連れてきたのに、と思わなくもない。しかし委員長の嬉しそうな顔を見て、文句を言う気も失せてしまった。
それにこれは、自分の力を試す、良い機会かもしれない。

「じゃあ、勝負は五日後ね、ナツ!」
「おう!」
「ところで」

男性は貼りついたような笑顔をルーシィに向けた。

「ナツさんとルーシィさんと…あなたはどなたです?」
「あたしがルーシィですっ!」
「え?」
「オイラ、ハッピーだよー」
「おい、まさかオレにハッピーと戦えって言ってたのかよ?」

慌てたように両手を振る男性を見て。
ルーシィはやっぱり一言言ってやろうと口を開いた。






ナツVSハッピーの方が面白そう…。


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