ナツは彼女の抗議には耳を貸さず、ミラジェーンに向き直った。

「何騒いでたんだ?」
「ふふ、気になる?」
「なる」
「ナツは素直ね。誰かさんと違って」
「ナツは意味わかってないだけです!」
「で、何だったんだ?」
「ナツの話よ」
「ミラさん!」
「オレ?」

顔が熱くなる。
疚しいことはないが、嫉妬だの何だの、ナツには引かれそうな内容だ。そして本人の居ないところでそんな会話をしていたなどと知られたら。

これじゃ、あたしがナツのこと好きみたいじゃない!

言い訳を探して口を開けると、ナツが無邪気に牙を見せた。

「ルーシィもか?」
「へ?」
「オレもルーシィの話、してたぞ」
「あ、やっぱり?」

ミラジェーンがぱちん、と両手を打ち鳴らした。

「ナツがあんな顔して話してるなんて、絶対ルーシィのことだと思ったわ」
「顔?」
「ええ。すっごく嬉しそうだったわよ」
「ちょ、ちょっと、ミラさん!?」

何を言い出すのか。かぁ、と頬が更に熱くなって落ち着かない。
しかし、ナツがこの上ないほど機嫌良く会話していたのは、ルーシィ自身も感じたことだった。その内容が、まさか自分だったとは。
どくん、と鼓動が強くなる。

もしかして、ナツって、あたしのこと――?

ミラジェーンはにっこりと彼女に追い討ちをかけた。

「ルーシィと同じね」
「え?」

一瞬、言われた意味がわからなかった。浸透して、理解して――ルーシィの思考が爆発する。

「んなっ、な、は…や、違っ!」

頭の中に羅列する否定に口が追いつかない。ぱくぱくと鯉のように息継ぎするルーシィをよそに、ぽかん、と口を開けていたナツが、「同じ…」と呟いて嬉しそうに頷く。

「うん、オレ達、チームだし!」

やはりナツは理解できていないようだ。しかしそれに助けられて、ルーシィも慌てて調子を合わせる。

「そ、そうよね!チームだもん、ね……」

チームだから、話題に上がる――。
考えればすぐにわかることだった。ナツが恋情を抱いていたとすれば、安易に『ルーシィの話をしていた』などと言うはずがない。
ほっとしつつもどこか残念なような、物足りないような。自分の声もどこか寂しげに聴こえた。
ナツは彼女の様子に気付くことなく、とすん、と横に腰を下ろした。

「チームって良いよな。オレ、ルーシィ来るまで組んでなかったけど、こんな楽しいと思わなかった」
「そ、そぉ…」
「ありがとな」
「っ、ぅ、いきなり、何よ」
「んー?言いたかっただけ」

ナツは満足げに笑って、カウンターに頬杖を突いた。

「でもチーム組んでっと、似てくんだなあ。リサーナにも言われたし」
「え、そうなの?てか、どこが似てんのよ」
「さあ?失礼だよな」
「そうね…って、それあたしのセリフだからね!?」
「ふふ」

くすくすと笑いを零して、ミラジェーンは手首を擦った。花のモチーフがしゃらりと揺れる。






ストラウス姉妹の着眼点はきっと同じ。


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