三人の背中は緑に遮られてすぐに見えなくなった。

「ったく…」

ナツは同じように見送っていたジュビアに目を移した。納得がいかず地団駄を踏む。

「なんでオレがジュビアより年下扱いされんだよ。おんなじくらいだろ?」
「ジュビア、子供扱いされた…でも幸せ〜!」
「無視かよ!?」
「グレイ様に、だ、だ、抱っこ……!」
「聞いちゃいねえし…」

ジュビアという女は、ナツにとっては不思議な存在だった。気付けば近くに居るのに、きちんと会話した覚えがあまりない。
と、いうより、彼女は自分の世界に入り込んでいて、話にならない。
ふぅ、と息を吐き出して、ナツは足を踏み出した。それはさすがに見咎めたか、ジュビアが声を投げてくる。

「ナツさん?」
「行く」
「え?でも、グレイ様はここで待ってろと」
「つまんねぇじゃん、待ってるだけなんて。オレ行くからな」
「ダメです」

グレイの言いつけを守ろうと、ジュビアが水の帯を纏った。魔力量に比例してずいぶんと細く勢いの無いそれを、ナツの足元にびしゃびしゃと撒いてくる。

「お?やんのか?」

ナツは両手に炎を燃やした。吹けば消えそうだったが、腹に力を入れて目一杯に火力を上げる。

「へ、かかってこいよ」
「ジュビア、グレイ様のために負けない」

基本肉弾戦で炎はブースト補助――そうでないとあっという間に消火されてしまう。
仲間相手のため遊び半分以上だが、戦略を整えて腰を軽く落とす。
その時。

がさ。

「え?」

ナツの後ろから何かが出てきた。




ハッピーの示す方向に進みながら、ルーシィは声を潜めて笑った。

「知らなかった、グレイって子供好きなのね」
「そんなんじゃねぇよ。まあナツみたいなクソ生意気なガキじゃなきゃ、別に嫌う理由はねぇけどな」
「グレイは子供好きだよー、オイラにもよくお魚くれるもんね」
「…やった覚えねえんだけど」
「あい、今後の話をしています」
「おい」
「ホント、グレイって面倒見いいし、良いお父さんになりそうよね」
「このタイミングで言うのか、それ。お前も何か欲しいとかじゃねえだろうな」
「違うわよ!まあ、そんなに言うならお肉とか」
「言ってねえし!つーかそれ、ナツの腹に入るんだろ!?」
「ナツだって今は子供よ」
「子供だろうがナツだろが!」

グレイの足が落ちていた枝をぱきり、と踏み折る。
その様子がさっきまでと同じ人物とは思えず、ルーシィはくすりと笑った。

「ジュビアにはあんなに優しかったのに」
「お前こそ、ずいぶん可愛がってたじゃねえの」
「そうねー、子供が出来たらこんな感じかなって思っちゃった」
「あんなのが産まれるって、親が相当…あ、お前、ナツの子供産む気なのか?」
「んなっ、ちっ、違うからっ!」

グレイの言葉に、反射的にナツと自分と、ナツ似の子供が並んでいるのを想像してしまう。ルーシィが赤くなった頬を手で挟んで呪文のように「ないないないない!」と繰り返すと、グレイは満足したように口角を上げた。

「いい反応だな」
「あい。ルーシィってホント、からかい甲斐があるよね」
「ちょっとぉ!?」
「さあて、早く終わらせないと…どうせアイツら、じっとしてなんかいねぇだろうし」
「そっ、そうね。ハッピー」
「あい。もうすぐだと思うよ」

足を速めると、木々の合間に灰褐色の何かが見えてきた。三人は陰に隠れて、音を立てないように近付く。

「情報通りね」

四足歩行、背部に斑模様。鋭い牙と爪がいかにも肉食動物然としているが、目は草食動物のそれと同じく顔の左右に付いている。警戒しているのか、キョロキョロと辺りを見回していた。獲物を探しているようにも見える。






そんな反応するから虐めたくなるんだよ。


次へ 戻る
main
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -