甘い宝石に癒されて、大きな満足感とちょっとした後悔に浸りつつ――ルーシィはナツ達の冒険話に耳を傾けていた。
「でね、それが大きな魚だったんだー」
「魚?でも水なんて無かったのよね?」
「羽魚の親戚かもな、牙生えてたし」
「あい」
「普通は羽の有無で見分けるんじゃないの?」
「羽は無かったような気がする」
「え、どうやって浮いてたの?」
「浮いてたっつーか、地面からこう、にょきっとした感じで出て来て」
「今考えれば、エバルーみたいな魔法使ってたのかもね」
「へえ…ちょっと怖いわね」
ナツ達は妖精の尻尾歴が長く、様々な仕事をしてきている。初めは小説のネタに、と思って聞いていたが、今ではそれ以上の楽しみがあった。
「今度行ってみっか、あの村。久しぶりに」
「そうだねー」
「え、危ないじゃない。何しに行くの?」
「ルーシィが食われそうになるのを笑うため」
「おい」
とりあえずツッコミを入れたが、連れてってくれる、ということなのだろう。
くす、と漏れた笑みを、窓ガラスに映った自分の姿で確認する。反射に邪魔されてよく見えないが、外は晴れているようだった。
星は今日も綺麗だろう。
時計を見るとずいぶんな時間が経っていた。
ナツがルーシィの目線を追って、びっくりしたような声を上げる。
「お、もうこんな時間か」
「そうね、そろそろ」
「寝るか」
「あい」
「帰れ」
大体予測していた展開に、ルーシィは間髪入れずにドアを指差した。そしてここから先も予想できる。
ナツ達は強引にソファを陣取って泊まっていくだろう。
しかしルーシィが身構えると同時に、ナツはすっくと立ち上がった。
「あれ、帰るの?」
彼は何も答えず、迷いなく歩いて――
「寝る」
この部屋に一つしかないベッドに潜り込んだ。
「そこあたしのベッド!」
「寝心地良いよな、ここ」
「だよね」
「ちょ、ちょっと!ハッピーまで!」
「オレ、ここで寝たって明日ギルドで自慢するんだ。エルザの奴、悔しがるぞ」
「ナツ、それ死亡フラグみたいだよ」
「立てたフラグは回収しないとねえ?」
「凶器は鈍器のようなものと見られ――」
「あたしの拳のどこが鈍器よ!?」
いつもいつも、勝手なことばかり言って押し切ろうとする。仁王立ちして盛り上がったブランケットを引っ張ると、くるん、とナツが寝返りを打ってルーシィを見つめてきた。
「ダメか?」
――上目遣いで。
「……もぉ…今回だけだからね!」
「おう、さんきゅ」
にか、と幸せそうな笑顔。釣られそうになってルーシィはぐ、と唇を噛んだ。
結局絆されて、許してしまう。心の底から嫌だと思っていない自分にも、気付いていた。
それどころか、少し、嬉しいような気もしていて――。