「なんだよ?」
「近くてキモチ悪い」
「……そうかよ」
「近過ぎてお前がキモチ悪い」
「喧嘩売ってんのか、凍らすぞ!?」
「なあ」

ナツは珍しく声を潜めた。

「お前ら、できてんの?」
「は…はあああ!?」
「アルザックとビスカだって、こんな近くに座んねぇよ」
「近…っ…あー…気付かなかっ」
「たわけねえだろ」

ツッコミにしてはやや棘のある口調で、ナツがばさりと切り捨てた。

(コイツ、普段何にも考えてねえ癖に!)

てっきり恋愛方面には頭がいかないものと思っていた。
ジュビアはわかりやすい。周知の事実だろうとは覚悟していたが、まさかこの男にまで気付かれるとは。
むぅ、と口を尖らせて、ナツがごちた。

「オレ、お前に話しかける度にめっちゃ睨まれてんだぞ」

(それでかよ)

グレイはジュビアと話していても、いつの間にかナツと乱闘になっていることが多い。なぜか恋敵認定されているルーシィを除けば、ナツが一番睨まれる頻度が高いだろう。
ナツは椅子の上で胡坐をかいた。

「なんで隠してんだ?」
「そんなんじゃねえよ。…ジュビアだって、そういうつもりでオレの近くにいるわけじゃねえ」
「へ?じゃあどういう……ああ」

ナツがぽん、と両手を打った。

「暗殺しようとこっそり近付いて」
「違ぇよ!」
「ちぇ」
「残念そうだなあ、オイ」
「じゃあやっぱり、そうなんだろ?」

思わず目を逸らしたグレイの視界に、ナツが強引に割り込んでくる。

「秘密にするようなことか?」
「だから違うっての!」
「ホントかよ?」
「当たり前だろ!しつけえな!」
「なんだ」

手で追い払うと、ナツはようやく引き下がった。椅子に深く座り直して、足をつまらなさそうにばたつかせる。

「オレにだけ秘密にされてんのかと思った」
「他の奴らならともかく、ルーシィがお前に隠し事なんかするわけねえだろう」

ナツがぴくりと揺れた。不思議そうにこちらを見て「ルーシィ?」と呟いたかと思えば、満面の笑みで頷いてみせる。

「うん。ルーシィはそうだな」
「つか、お前が隠し事させねえだろ」
「おう…って何だそれ」

本気でわかっていないように、暑苦しい色の髪を揺らす。

(ほとんど付き纏うみたいに一緒にいるのに、自覚ねえのか)

彼女のどこに、秘密を作る隙があると言うのか。
話題に上がったルーシィは、今日はまだギルドに来ていない。

「ルーシィ、な……」

つい、とナツがリクエストボードに目を向けた。やや背伸び気味のジュビアをちらりと見てから、きょときょとと視線を彷徨わせる。

「なあ、グレイ」
「なんだよ、落ち着かねえな、てめえは」
「お前さ、ルーシィに睨まれたこと、あるか?」
「あ?何度もあるな」
「そうじゃなくてよ。その…オレと話してるとき、とか」
「ねえよ」
「だよな」

すとん、とナツの肩が落ちる。心なしか、髪の毛先も下を向いたように見えた。

(なんだよ、コイツ…ルーシィのこと)

グレイはどっと疲れたような心地で息を吐き出した。






ジュビアとグレイの距離でナツとグレイが座ってたらたにしビビる。


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