「…?」

違和感を感じた。いや、いつも通りのはずだ。
転びそうになったルーシィの手を捕まえた、だけ。
きゅ、と握った細い手。
ルーシィの。

「……」
「ナツ?どうかした?」

澄んだ瞳が不思議そうに見上げてくる。

「いや、別に」

そう。どうもしない。ただ。
放すタイミングが見つからないだけだ。
力を込めないように、でも放さないように。半ば固まった左手を下ろして、ギルドへ向かって歩き出す。
ちらっと見るが、ルーシィは普段通り隣を歩いている。
何も気にしてないように。

なんで?
手、繋いで歩くって…いつも通りだったっけ?
ルーシィと?
いやいやいや、なんでこれがいつも通りなんだよ?
メチャメチャ緊張するじゃねぇか。
いつもこんなことしてんのか?
オレの、バカ。

自分の気持ちに気付いた結果、こんなことになるとは思ってもみなかった。ルーシィとの距離が思い出せない。わからない。
左手は固まり過ぎて関節がぎしぎし言うようで、もはや感覚すら遠い。
どうしようか、このままギルドまで行っていいんだろうか。
角を曲がったとき、すいっと手の間に空気が触れた。
ルーシィが手を放したんだ。
少しの安堵と、大きな落胆。
これもいつものことだったのか?
オレが繋いで、ルーシィが放す?

「なんか静かね、ナツ」
「そうか?」
「そうよ。気持ち悪いくらい」

だってそれはお前の手が。
言い出せなくてむっとしたまま黙る。
ルーシィは肩のカバンの位置を直して。
再び右手をオレの左手に絡めてきた。

「!」

思わぬ行動に顔が熱くなる。ぎしり、と固まったオレに気付いて、ルーシィが口角を上げた。

「エスコートしてくれるんじゃないの?」

こいつ、全部わかってやがる。

オレはテンパリ過ぎてて、ルーシィの頬も赤いことには気付けなかった。





靴が鳴る










短文ですね
小悪魔ルーシィと自覚後ナツでしょうか。これ以上話が膨らまないので暖めず投下。carpioっぽくないけど捨てるのももったいないもんで…すみません、貧乏性で…



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