手を繋ぐなんて当たり前。肩を抱かれたり擦り寄られたり。
あたしも周りもみんな知ってるのに、本人だけが気付かない。
でも今日はなんだか隣が静かで、手が変に汗ばんできた。
もしかしたら気付いたの?
もう知らない振りしなくていいの?
繋いでいないナツの右手が、落ち着かないように上へ下へと彷徨っている。
ああ、やっぱり。
気付かれないようにくすりと笑って、駄目押しに手を放してやる。
ぴくり、と揺れる肩。隠そうとしたって無駄だってば。

「なんか静かね、ナツ」
「そうか?」
「そうよ。気持ち悪いくらい」

そう。気持ち悪い。気付いたなら直球で来なさいよ。受け止めてあげるから。
ナツが予定通り落胆したのを確認して、口元が緩む。
もったいぶってバッグの肩紐を直してから、また手を繋いでやった。
赤くなったナツを見て、達成感。なにこの生き物。可愛いってば。
ああ、でも。あんまりからかうと意固地になっちゃうかしら?

「エスコートしてくれるんじゃないの?」

放されたくないから、口実をあげるわ。







2010.9.13〜2010.9.14拍手お礼


戻る
main
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -