手を繋ぐなんて当たり前。肩を抱かれたり擦り寄られたり。
あたしも周りもみんな知ってるのに、本人だけが気付かない。
でも今日はなんだか隣が静かで、手が変に汗ばんできた。
もしかしたら気付いたの?
もう知らない振りしなくていいの?
繋いでいないナツの右手が、落ち着かないように上へ下へと彷徨っている。
ああ、やっぱり。
気付かれないようにくすりと笑って、駄目押しに手を放してやる。
ぴくり、と揺れる肩。隠そうとしたって無駄だってば。
「なんか静かね、ナツ」
「そうか?」
「そうよ。気持ち悪いくらい」
そう。気持ち悪い。気付いたなら直球で来なさいよ。受け止めてあげるから。
ナツが予定通り落胆したのを確認して、口元が緩む。
もったいぶってバッグの肩紐を直してから、また手を繋いでやった。
赤くなったナツを見て、達成感。なにこの生き物。可愛いってば。
ああ、でも。あんまりからかうと意固地になっちゃうかしら?
「エスコートしてくれるんじゃないの?」
放されたくないから、口実をあげるわ。