ジュビアから依頼主について予習して。
ルーシィはナツと一緒にトレニアという町に来ていた。

「うぉっぷ…帰りは歩いて帰ろうな…」
「できるかっ!…ほらナツ、着いたわよ」

依頼主は町の実業家で子爵のノディーヌという人物。精力的な方ですよ、色んな意味で、と言っていたジュビアの言葉を思い出す。
駅からの迎えの馬車で2コンボを食らい、グロッキーなナツの肩を叩く。
馬車は町外れの小高い丘の上にある、瀟洒な館の前で止まった。




「私がノディーヌなのである。祭の間、3日間の護衛を頼むのである」

30前後だろうか、年齢にしては小太りの男性が、一人がけの応接ソファでナツを熱っぽく見つめて言葉を発した。

「お任せください」
「ナツさん…と、こちらのお嬢さんはどなたなので?」
「ルーシィと言います。あたしも妖精の尻尾の魔導士です」
「女性は要らぬと言っておいたのである」
「…申し訳ありません、チームで仕事に当たっていますので」

思ったよりも直球だわ。
にっこりと笑みを返しつつ、ノディーヌとの間に火花が散ったのを感じる。相手もルーシィを敵と認識したようだ。ちっ、勘の良い奴。

「ナツさんはどのような魔法を使うので?」
「オレは炎の魔導士だ!」
「それは頼もしいのである」

人懐こい笑みで屈託無く話すナツを、注意深く観察するように眺めるノディーヌ。
その視線のねちっこさに、向けられてないはずのルーシィの背中が粟立った。

「ところで、祭というのは?」
「明日から開催される音楽祭なのである。近隣の町から多数集まるので」
「襲われる可能性がある、と?」
「よっしゃ、任せろ!」
「ナツさん」

元気良く腕を振り上げるナツの、膝を目掛けてノディーヌの腕が伸び、

すかっ!

空振りした。
ルーシィはナツの腕を掴んで引き寄せ、膝の位置をずらすことに成功したのだ。

「お?なんだよ、ルーシィ?」
「――ううん、なんでもない」

目線はノディーヌに向けたまま、そう答えた。




ルーシィは奮闘していた。
ノディーヌは隙あらばナツに触れようと近付く。もともとパーソナルスペースの狭いナツのこと、敵意さえなければ避けようとはしない。
ルーシィはノディーヌから目を離さず、なるべくナツが気付かないように(気付いてしまうとナツの無邪気な笑顔が失われる気がした)行動していた。
最初はナツとの間に体を滑り込ませることで阻止していたが、だんだんとノディーヌの行動がおおっぴらになるにつれ、ルーシィの妨害も受身ではいられなくなってきた。ナツの後ろから腰を前後に振りつつ歩み寄るわ視姦してよだれを垂らすわ。ルーシィはその都度、偶然を装ってノディーヌを転ばせ、何かを落としたフリをして足を踏み、ぎりぎりとテーブル下で睨み合う。

「いい加減にしましょうよ?嫌われたくないでしょう?」
「ナツさんは人を嫌ったりするようには見えないのである。きっと受け入れてくれるのである」
「せめてもう少し段階踏むとかしなさいよ!確かに言葉でも伝わりにくい相手だけど!」
「それはお嬢さんの恋愛スキルが低すぎるのである」
「な、あ、あたしだって彼氏の一人や二人!」
「いた試しなどないのである」
「ア、ン、タって奴は…っ」
「大体お嬢さんは片思いなので邪魔する権利なんて無いのである」
「片っ…て別にあたしはナツのことなんかっ!」
「ナツさんにとってお嬢さんはそういう対象でないのである」
「ぐぅっ…!な、何よ!アンタだってそういう対象じゃあないでしょーがっ!」
「これからなるのである」
「その動作止めなさいよ!!」

ナツが席を立てばガールズトークに花を咲かせつつ枯らせつつ。ノディーヌとルーシィは日々対峙していた。
ノディーヌはナツに警戒心を抱かせたくないのか、ルーシィに出て行けということもなく(出て行ってもかまわない、とは言われているが)。
笑顔で睨みあっている後ろでナツが口をへの字に結んでいたが、ルーシィが気付くことはなかった。






ルーシィはどこへ行っても遊ばれます


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