冬景色






「それで、昨日ルーシィん家に悪戯しかけてきたんだよ」

ナツの話にオチが付いたところで、聞いていた連中が苦笑した。

「ルーシィも気の毒にな」
「ナツは本当に、ルーシィがお気に入りだよな」
「あいつ、リアクション面白ぇもん」
「あい!」

元気良く手を上げて同意した相棒と「なー」と声を掛け合って、ナツはちらり、と視線を走らせる。話題のルーシィはカウンターでロキとくすくす笑い合っていた。
仲間の一人が、その視線を追ってにんまりと口角を上げた。

「お前、ルーシィのこと好きなんじゃねぇの?」
「は、はぁ!?んなわけねぇだろが!」
「冗談だよ、ムキになると余計に怪しいぞ」

止まらないにやにや笑いにナツは頬を引き攣らせた。うんざりして眉間にシワを寄せて、そっぽを向く。
こういう話題は苦手だった。大体、なんでそうなる?

「まぁナツはそんな話とは一切無縁だもんな」

助け舟と言い切れないバカにしたような声音にむっとしつつも、ナツ自身反論は出来ずに押し黙る。
しかし、その方が楽だった。
ナツには恋なんて理解できない。そういうのは邪魔だ。ルーシィはルーシィであって、決して女じゃない。女だから気に入ってるわけじゃない。
変な色眼鏡で見て欲しくない。
口を尖らせると、ルーシィを盗み見ていた仲間がナツに視線を戻した。

「なぁ、ルーシィって彼氏居るのか?」
「ルーシィに…なんだって?」
「彼氏、居んのか?って聞いてんだよ」
「ルーシィはロキとできてるよ」
「へ?」

ハッピーがテーブル上で、なんでもないことのように口にした。周りがそれに反応して、嘆きの声を上げる。

「だぁああ!またロキかよ!」
「ルーシィまで!?アイツ食い過ぎだろ!」

ナツは2、3度瞬きしてハッピーを見つめた。
ルーシィと、ロキ?
ロキがちょっかいを出すことはあっても、ルーシィがそれを許容しているようには見えなかった。いつだってツッコミを入れて――他の連中と扱いが変わらないではないか。
ナツは納得いかない面持ちで、簡単に受け入れた周りを見回した。

「ルーシィはそういう訳じゃねぇだろ?」
「でも口だけだよ。ルーシィ結構その気あると思うよ。面白いんだ、からかうと」

ハッピーは自身有り気に、きっぱりと言い切った。
思いも寄らぬ相棒の思考に面食らって、ナツは少しだけ顔を俯けた。

「…そうかよ」
「オイラ同じ猫として、ロキを応援してるんだ」
「猫じゃないだろ、ロキは…」

ハッピーへのツッコミを仲間に任せて、ナツはもう一度カウンターを見た。そういうことを聞いた後だからだろうか、さっきよりも2人の距離が近いように思える。

なんだか変な感じがする。

さっきまでの楽しい気分が、急に萎んでしまったようで。

ナツは中身のほとんど残っていないジョッキを持ち上げた。






無自覚嫉妬。対ロキは珍しいですね。


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