後は任せた






「いってぇえ!?何すんだ、このクソ氷野郎!」
「ふざけんじゃねぇよ、大バカピンク頭!熱いじゃねぇか!」
「ぎゃんぎゃん喚いてんじゃねぇよ!てかなんでパンツ一丁なんだよ!?」
「あ!?い、いや、てめぇに関係ねぇだろが!つかてめぇ誰だよ!?」
「グレイー!!大丈夫なの!?」

ハッピーが叫ぶも、グレイはナツと両手を掴み合わせ、ぎりぎりと力比べの体勢に入っていた。
2人の背後でガラガラと、氷壁が砕けて降り注いでいる。ハッピーは喜びに揺れる視界を瞼で払って、グレイを注意深く観察した。
身体からはまだぴしぴしと小さく氷が出現している。しかしそれらはグレイがナツを押すように足を踏み出すと、すぐに霧散した。本調子ではないが、とりあえずコントロールは可能、というところだろうか。

「ナツ、グレイ!そんなことしてる場合じゃないよ!早くしないと、ルーシィが!」
「ルーシィ?てか、ハッピー、お前こんなとこで何してんだ」
「そうだ!おい、氷野郎、早く行けよ!」
「え?」

ハッピーはナツの言葉に耳を疑った。ぽかん、と見上げると、ナツはグレイの両手を掴んだまま、

「ほら、オレの魔力やるから。早く助けに行って来い」
「あ?」
「ちょ、ちょっと、ナツ?ナツが行かないと、」

ここでルーシィを助け出せば、ナツの株は急上昇するだろう。グレイも無事助け出せたし、ヒーローじゃないか。そのつもりじゃなかったのか?
ナツはハッピーを遮って、首を振った。

「もう動けねぇ。悔しいが、後は頼んだ」

に、と笑って。
ナツは膝から崩れ落ちた。

「お、おい!?」

グレイが慌ててその身体を支えたが、垂れ下がった腕には力が入っていなかった。

「ナツ!?」
「…眠ってるだけだ」

グレイが溜め息と共に、ナツの身体を横たえた。
ハッピーは上着をナツにかけてやって、グレイに向き直る。

「敵は幽鬼の支配者の兎兎丸。ルーシィが捕まってる…詳しい話は後で」
「それだけ聞けば十分だな」

グレイは氷の残骸の中から白いシャツを掴み上げた。




「身体は大丈夫なの?」
「とりあえずはな。…兎兎丸を利用してなんとかする。あれだろ?」

眼下の噴水近くに、黄色い炎の塊が見て取れる。

「こっちは任せろ。お前はあいつを」
「あい!」

ハッピーはグレイの指示通りに上空で手を離した。だん、と着地する音と同時に、炎の塊から人影が出てくる。
ハッピーはそれを視界の端に捉えてから、翼で来た方向に取って返した。

「ナツ…」

全速力で夜空を奔り――洞窟に戻ってきたときには、ナツは変わらず白い顔で地面に横たわっていた。一瞬血の気が引いたが、緩く呼吸をしている。
ハッピーはすぐさま掴むと、再び公園に進路を向けた。
ナツがグレイにどれくらい魔力を分けたのかはわからないが、ただでさえ限界の近かった2人だ。その量は微々たるものだろう。
戦闘慣れしたグレイのことだ、きっと肉弾戦だけでも良いところまで兎兎丸を追い詰めるだろう。しかし心許ない魔力では、恐らく苦戦するに違いない。
ナツを公園に隠してから、噴水のゲートを使って魔法界に行き――助けを求めよう。
ハッピーは全力の飛行に目眩を感じ、高度を少しだけ下げた。

こっちも魔力が尽きてきていた。






ナツダウン。
次ページ、ちょっと場面飛びます。



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