星に想いを






「さくやはおたのしみでしたね」
「お楽しみじゃねぇし、昨夜でもねぇし。…てか、お前さ、そういう知識、どっから仕入れてくんの?」

幽兵を倒した後、携帯を片手にベンチでぼんやりしていたナツは、公園の入り口方向から歩いてきた茶虎の猫のセリフに半眼をくれてやった。

「ルーシィなら、来ないって」
「そうか」
「…帰らないの?」

動こうとしないナツに、ハッピーは少し心配そうな声をかけた。
ナツは握ったままの携帯に目を落として「んー」と唸る。

「ルーシィんとこに居たのか?」
「あい。タラのムニエル美味しかったよ」
「…良かったな」
「オイラ、ルーシィん家の子になろうかな」
「そんなこと言う子はうちの子じゃありません」
「テンプレ通りだね。逆に面白くないよ」
「うっせ。…ルーシィ、大丈夫そうか?」

訊くだけなのに、妙に緊張する。ナツは唇を湿らせて、ハッピーを見た。

「少し元気ないみたいだけど、大丈夫そうだよ。…」
「どうした?」

少し沈黙が入ったのを敏感に聞きとめて、ナツは促した。ルーシィに関することなら、全てを知りたい。知ることで、ルーシィの側に居るような気になれる。
ハッピーはそんなナツを見返してから、口を開いた。

「ナツはバカだって話、したんだ」
「は?」
「ルーシィも同意してくれたよ」
「ルーシィが?あ…そう…」

どうしたと言うのか。ナツは頬が緩むのを自覚して、マフラーに顎を埋めた。
どんな内容でも、自分の話題が上るのがこんなに嬉しいとは。
その様子を見て、ハッピーが呆れた声を漏らした。

「本当にバカだね」
「仕方ねぇだろ。…好きなんだよ」

ぽろりと、口から零れ落ちる、いつからなのかわからない強い想い。
紛れも無く本音のそれに、ナツとハッピーは同時に溜め息を漏らした。

「もう素直に言うべきだよ。ルーシィにも、リサーナにも」
「でも、オレはリサーナも大事なんだよ」
「でももだっても無いよ。言わないでこのままの関係を続けるつもりなの?大事なリサーナが可哀想だよ。今日だって、どうせ迫られたかなんかして、拒絶でもしたんでしょ?」
「お、お前見てたのか?」
「凄いね、ナツ。そこまでぽっかり墓穴掘る人初めて見たよ」
「あ、いあ…別に拒絶したわけでは」
「でもリサーナとはそういうことが出来ないって、思ったんでしょ?」
「……」

ぐうの音も出なくなって、ナツは口を閉じた。ハッピーはなおも言い募る。

「ちゃんとルーシィに伝えて玉砕すれば、その後リサーナを好きになるかもしれないでしょ。リサーナと付き合うのは、それからでも遅くないよ」

玉砕。目には入ってないわ、グレイのこともあるわ。そうには違いないが、改めて走る胸の痛みにナツは唸った。

「それ、あっちが駄目ならこっち、みたいな最低男じゃねぇか」
「今でも十分だよ」
「…そうだよな」

伝えても伝えなくても――どうせ、もう少しでナツはルーシィを好きで居られなくなる。
だったら、少しでも後悔しないように行動した方が良いのだろうか。…リサーナを傷付けてまで?

見上げた空は、星が綺麗だった。






リサーナとの関係を続けることに無理があると感じた模様。



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