今そこにいる危機






(ルーシィを端に寄せておいたよ。オイラ大変だったんだから、褒めてよね)
(……)

部屋に戻ると、ベッドの壁際に眠るルーシィの前でハッピーが勝ち誇ったどや顔を披露した。
さっきは上を向いていたルーシィが、何の策略か拷問か、こちらを向いて横になっている。
もう何も言う気がしなくなって、ナツは部屋の電気を落とした。

(おやすみ)
(…おやすみ)

ハッピーは今度はルーシィの腹の辺りに陣取った。布団を少しだけめくると、ナツもその中に滑り込む。
自分のベッドに入るのにどうしてこんな緊張しなきゃならねぇんだ。
大きく鼓動を告げる心臓に歯をくいしばりながら、ナツは静かに身動ぎした。
温かい。さっきまでルーシィが寝ていたからか。
シングルサイズの為、逃げ場は無い。どうしても近寄る必要がある。
そう。必要があるからだ。
ルーシィに向き合うように横になると、ナツは吐息がぎりぎりかからない距離までにじり寄った。
暗闇に慣れてきた目でその寝顔を観察する。
すらっとした鼻のライン。長い睫毛。薄く開かれた唇。
無防備を絵に描いたようだった。
顔にかかった金髪を後ろに流してやってから、ナツは肩の辺りに置かれた手を取った。

オレの魔力やるよ。弱ったりなんかすんじゃねぇぞ。

念じると手じゃない何かが繋がったように感じた。幾分冷たい指先に唇を寄せて、ナツも目を閉じる。

「……」

……眠れない。
まったく眠気が来ない。なんだこれ。
頬の熱が下がりそうもなく、心臓は脈打ったままだった。その内口から出てくんじゃねぇの?
諦めかけて目を開けると、そこには変わらないルーシィの寝顔。

やっぱ駄目だろ、これ。オレだって男だぞ?

何故か脳裏に戦闘中に見てしまった下着やら、背負った時に触れた感触やらがまざまざと思い出される。いや、そういえば顔を埋めたんだった。
熱は全身に巡っていき、変身もしてないのに解放しろと訴えてくる。
細い腕。白い首筋。中身の詰まった、それでいて柔らかいふくらみ。頭に思い描くルーシィが視線の先に眠る女と被り、段々とその衣服を脱いでいく。一枚、二枚。恥ずかしそうに、でもその瞳は期待に満ちて。

くそっ、ルーシィ相手にこんなの…。

下半身に血液が集まる感覚に悔しくなって、手に無意識に力が入る。と、

「んん…」
「…っ!?」

ぐい、と持って行かれた。
ルーシィの頭が寄せられ、ナツの手を抱え込むように引き寄せる。
包みこんだ温かい感触にぎしり、と固まって、ナツは差し出されるように近付いた唇を凝視した。
色付いてぷくりとしたそれは、食べてとナツを誘っているようで。

「――…」

ガマン、イクナイ。
何かに突き動かされるように、ナツは空いている手でルーシィの肩を掴む。
肘を支点に身を起こすと、ルーシィに覆いかぶさった。


(はい、そこまで)

ハッピーは手でナツの口を押さえた。ルーシィの唇まで、あと3cmの距離だった。
ナツがそれに目を見開いた一瞬後には、身体からするりと力が抜ける。

眠ったかな。

ルーシィに半分重なったナツの身体を転がして、ハッピーは息を吐いた。
睡眠魔法にはあまり自信が無かったが、効いて良かった。
布団の中を確認すると、二人の手は繋いだままだった。ナツはもちろん、ルーシィもちゃんと手を握っている。
ルーシィの表情は安らかなままだ。
ハッピーは目を細めて、ふるふると頭を振った。
グレイも助けたいしナツにも死んで欲しくない。
ルーシィはグレイを選ぶつもりのようだが、それはきっと無理だろう。ルーシィにナツは殺せない。優しすぎるし、情が移りすぎている。
どうしたら良いんだろう。
ハッピーは布団に潜り込んで二人の間に丸くなった。






ナツ、試練に破れるの巻。まぁ、良く頑張ったよ。


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