「なんか方法があるはずだ」

困ったときのなんとやら、でナツはルーシィとコルネトをギルドに連れてきた。しかし頼みの綱のマスターは眉を寄せて、悲しげに首を振った。

「小人化の魔法は失われた魔法の一つじゃ。現在の解呪理論では手の打ちようがない。恐らく月の雫ならなんとかできるじゃろうが…この場合は時間がかかり過ぎる。月の雫が満ちる頃には、ルーシィと小人化の魔法が融合してしまっているじゃろう。解除すれば…命を落とすことになる」
「じゃ…じゃあ…ルーシィは、このまま…?」

ミラが唇を震わせた。周りを取り囲む仲間達も顔を青褪めさせて呆然と話を聞いている。
ナツは首を振った。そんなはずはない。聞きたくない。

「ルーシィ」

カウンターの上で話を項垂れて聞いていたコルネトが、青褪めたルーシィに向き直る。

「僕と、結婚してくれないか」
「…は、い?」

小さな二人の声は滅竜魔導士にしか聞こえないようで、傍観を決め込んでいたガジルや涙を浮かべていたウェンディが目を丸くしてコルネトを見た。
ナツは突然の展開に二人を凝視する。

「こんなことになったのは、元はと言えば僕の責任だ」
「ちょ、ちょっと待って!」
「そうだぞ、いきなり何言ってんだよ!?」

黙っていることなど出来ずに、ナツは二人の会話に割って入る。聞こえない仲間達が騒ぎ出したナツをきょとん、と見やった。

「コルネトさんが、ルーシィさんにプロポーズしました」

ウェンディが通訳代わりに告げる。ざわり、と空気が揺れた。

「僕は元々、君と結婚することを念頭に置いて、話しかけたんだ。君との会話は楽しかったし、こんなことになっても、君は僕を責めたりしない…。君は容姿が美しいだけじゃなく、聡明で優しい、僕の理想の相手なんだ」
「え、あ、あの」

かぁああ、とルーシィの頬が真っ赤に染まる。
ナツはコルネトの言葉もルーシィの反応も気に入らず、声を荒げた。

「てめぇ、何勝手なこと言ってんだよ!」
「僕らの世界で、何も知らないルーシィが一人で生きて行けるはずないだろう?僕と結婚すれば、衣食住の心配は要らない」
「だ、だからって、いきなりそんな」
「ルーシィがお前らの世界で生きるって決め付けんな!」

ナツの叫びに、びくり、と肩が揺れる。コルネトも、ルーシィも、ギャラリーでさえ。

「ルーシィは妖精の尻尾の魔導士だ!返せ!」

それはただの子供の叫びだった。現状を全て無視して、地団駄を踏む駄々っ子のようだった。

「戻れないなら小人の世界で生きていくしかないだろう」

コルネトが唇を噛んで言い含める。

「人間の世界の、段差一つが命取りなんだ。君はルーシィにそんな苦労をさせたいのか!?」
「それでも!小人のままだとしても、ルーシィはルーシィだ!お前の嫁になんかさせねぇからな!!」

捨て台詞よろしく、ナツは叫んだかと思うと、ルーシィを引っつかんだ。

「きゃあ!?」
「お、おい!ナツ!?」

両手でルーシィを壊れないように包んで、走り出す。


目的地など無かった。ただ、現実から逃げたかった。






ルーシィ褒め殺しに遭う。


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