ナツは頭上に本を掲げてページを捲り始めた。

「どーれ」
「わああああ!」
「どこだ、そんな隠すほど面白いとこ」

ナツってこんな背ぇ高かったっけ!?くっ、ダメ、届かない……!

「んー……?絵か?」
「ダメー!」
「おわあ!?」

無我夢中で仕掛けた体当たりが、ナツを床に転がした。あたしも当然、その上に倒れる。

「いたっ!」
「ふぎゅぐ!?」

ナツがわざとらしく潰れたような声出したけどそんなの気にしてらんない。本は!?
あたしが顔を上げたと同時に、ナツの頭に本が落ちてきた。

「いっ!?」

背表紙直撃。結構硬い音がして、ナツの上で力なくページが開いた。しかもあのページじゃない!

「わわわ」
「んぶ?」
「ちょ、動かないで……あれ?」

ん?この絵……もしかして、そういうシーンじゃない、のかな?
ベッドらしきところに、女の人が寝そべってて、その上に男の人が跨ってる。けど、よく見たら首元のこれ、ナイフよね?
ページを戻して、シーンの始まりを探す。えーっと……あ、やっぱりそうだ。女の人が夜盗の設定なのね。

「なんだ……」
「おい、ルーシィ?」

挿絵のナイフに、竜のモチーフが付いてる。これ、表紙の刺繍と同じかも?
表紙を確認しようと本を閉じたら、ナツと目が合った。

「なんでお前、オレの上で読み始めてんだよ?」
「あ、ごめん……っ……」

ひゃ、上に乗ったままだった。まあ良いか、ナツだし。

「タックルしてきたと思えばエルボードロップかましてくるわ、オレじゃなかったら吐いてたぞ」
「そんなことしたかしら!?」

とは言いつつ、覚えがないとも言い切れない。あたしはナツの上から下りて、そのまま彼の横に避けた。ナツが身体を起こすのを待つ。

「続き、読む?」
「ん?もう隠さなくて良いのか?」
「か、勘違いだったの!」
「そうか、良かったな」
「え、えっ?何が?」

まさか、あたしが勘違いした内容を知ってる!?
でもナツはあたしの肩を叩いてこう言った。

「金欠を抉るような暴言、書いてなくて」
「……それ、どんなこと?」
「わかんねえけど」

ナツは「でもルーシィが読まれたくねえことだろ?なんかこう、弱みみたいなの書いてんのかと」と言いながら大きく伸びをした。

「そうだったら面白かったのにな」
「弱み握ってどうするつもりよ?」
「いあ?そんなことしねえよ。ルーシィの弱点なんて多過ぎて今更だ」
「酷い!」

そりゃ、あたしだって完全無欠なんて思ってないけど。それにしたって、間接的に弱いって言われたみたいじゃない。

「……ナツだって乗り物酔いっていうわかりやすい弱点あるじゃないの」
「まあなー」

少しは痛そうな顔でもしてくれるかと思ったのに、ナツはあっけらかんとした。なんでか誇らしげに胸まで張ってる。

「オレの弱点は乗り物と……あと、ルーシィだな」






挿絵がある本って考えたら微妙な対象年齢かも。


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