ギルドに来る途中で看板見かけたから、軽い気持ちで教えてやったんだ。

「今日、本屋半額だってよ」
「えっ、ホント?」

嬉しいことや楽しいことがあると、ルーシィってすぐはしゃぐ。わかりやすくて面白いけど、その分こっちに温度差があるときは引く。うわー、スキップしてるし。

「あ、ナツも一緒に来る?」
「いんあ」

行くわけない。本屋なんて食えるモン売ってねえし、なんか便所行きたくなるし。

「そ?じゃああたし行くわね。すぐ戻ってくるから!」

ルーシィはギルドを飛び出してった。本が好きで金がないルーシィだから、絶対食い付くってわかってた。
けど。

戻ってこなくなるなんて、思わなかったんだ。





どこかでだれかがないている








「オイラ、そんな看板気付かなかったな……」

ハッピーがきょろきょろしながら付いてきてる。あれ、さっきもあったけどな、でっかい字の。ハッピー気付かなかったのか。
道にルーシィの匂いはもう無い。けど、行き先が本屋だってはっきりしてるからその点は問題ねえ。

「ったく、いつまでかかってんだ」
「でも今お昼過ぎだよ。このくらいならまだ本選んでるんじゃないのかな」
「遅ぇ」
「遅いとは思うけどさ」

すぐ戻ってくるって言ったんだ。エイプリルフールはもうとっくに過ぎただろ。
それに、なんかイヤな予感がする。

「あ、本屋着い――」
「ルーシィ!!」

あ、ドア壊れた。まあ良いや。大丈夫だ。オレは。

「ルーシィ!おい!」

奥からエプロンしたおっちゃんが慌てて出てきたけど、それ以外には誰も居ねえ。なんでだ。ルーシィどこ行った?

「ちょ、ちょっと、アンタ、何ドア壊してんだ」
「ルーシィは!?」
「は、はあ?」
「隠してねえで出せ!」
「ナツ、居ないよ。落ち着いて」

いてっ、爪立てんなよ。くそ、どこ行ったんだ。

「なあ、金髪の乳でかい女が来たろ?どっち行った?」
「女?今日の客は男しか来てないよ。それよりドア弁償してくれ」
「へっ?」

このおっちゃん、ルーシィを男だと思ったのか?
いあ待て。そういえばこの本屋、どこにも半額なんて書いてねえな。

「おい、ここ今日、本半額か?」
「は、半額?そんなことしたら商売なんねえよ!」
「本屋って他にもあったか?」
「向こうの通りにもう一件あるよ。今日は定休日だけどな。それよりドア……」
「じゃあ半額ってどこの店だ?」

んん?本だったよな?もっかい看板見てみっか。

「あい?ナツ、もう行くの?」
「おおおぉい!?ドア!弁償!お前妖精の尻尾のナツだろ!絶対払ってもらうからなあああ!」

おお、すげえ肺活量だな、あのおっちゃん。喚きランキングで上位に食い込みそうだ。ルーシィと良い勝負だな。

「ナツ、後でちゃんと謝りなよ」
「あ、そうだな。おーい、おっちゃん!悪かったな!」
「許さねえからなあああ!」

やべ、ちんたらしてたら追い回されそうだ。さっさと行こう。えーと、看板、看板……お、あった。

「んー……やっぱ本って書いてるよな」
「え?」

ハッピーがばさ、と羽ばたいた。

「何も書いてないよ?」






ルーシィ行方不明。


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