「「でっけえ!」」

オレとナツは揃って声を上げた。これ、妖精の尻尾の建物くらいあんじゃねえのか。
何て名前の生き物なのかは知らねえけど、でっかくなり過ぎたトカゲが、カタツムリの殻背負ってみた……みたいな、そんな感じの奴。依頼主は大昔に奇跡が起きたとかいう村の村長で、近くでモンスターが暴れているから追っ払ってくれ、ってのが、今日の仕事。ちょうど良く暴れられる依頼があって良かった。がんがん行くぞ!
オレはナツに目を向けた。ナツがこっちを見るのも同時。

「オレは上」
「じゃ、オレは下」
「何よ、それ?」

トカゲから後退りしながら、ルーシィが訊いてくる。オレは腰に手を当てた。

「決まってんだろ、攻撃位置だ。ハッピー、飛ぶぞ」
「あい!」

オレを抱えて、ハッピーが翼を出す。ナツがルーシィに「踏まれんなよ」と忠告してやってんのが、風に紛れて聞こえた。

「んじゃ、一発目!ハッピー、頼むぞ!」
「あいさぁ!」

ハッピーの急降下と一緒に、足から炎を出す。オレはそのまま、トカゲの脳天に火竜の鉤爪をぶち込んだ。

「ギャアアアアア!!」

うわ、うるせえ!近かったし、オレは思わず耳を塞いだ。ハッピーも塞いで……っておい。

「おわあああ!」

両手離されれば落ちるよな、そりゃ!
まあ、この高さなら痛いくらいで済むだろ。空中で出来ることは限られてるけど、とりあえずオレはいつでも攻撃に耐えられるように、トカゲの行動を探った。でかい身体がふらついてる。
お、白目剥いてんじゃねえか。でかいモンスターを一撃で揺らせると気持ち良いよな。おお、倒れかけたけど足踏ん張った。タフだな、コイツ。そうこなくっちゃな!

「ナツ!」

ルーシィが叫んでる。んげ、尻尾がオレに向かってきてる!?避けられ……ねえな、仕方ねえ、一発食らうか。

「火竜の鉄拳!」
「お」

尻尾どころか、トカゲの身体ごとオレから遠ざかっていく。ナツだ。
そうだ、覚悟を決める必要なんかなかったんだ。
ハッピーが落ちてくオレに追い付いた。ぶわっと身体が横に押されて、いつもの浮遊感。

「さんきゅ、ナツ、ハッピー!」
「おう!」
「あい!」

ハッピーがオレを連れてトカゲの背中に回り込む。あれ、この殻、身体から浮いてんな。カタツムリみたいに中に入れるわけじゃねえんだ。
だったら、殻を壊しても支障はねえんだろう。オレはそこを攻撃することに決めて、ハッピーに指示した。

「突っ込め、ハッピー!」
「あい……わ?」

トカゲの背中が、いあ、殻が、か?目の前に迫ってくる。ナツが下から攻撃したな。じゃあオレは予定通り、このまま突っ込むか。

「行け!」
「あいさー!」
「火竜の……鉄拳!」

オレは殻を破壊して、トカゲの背中を殴りつけた。殻の中にはやっぱり何も入ってない。もしかしてこれから入れるつもりだったのか?鞄みたいに。
オレの攻撃で、ナツ側にトカゲを押し付ける形になった。ナツはナツで、押し返してくる。はは、でっかいキャッチボールみてえ。
でもま、そろそろ、終わりにするか。

「ハッピー、行くぞ」

視線を上げるだけで、ハッピーはオレの目的をわかってくれる。上空に飛び立って、オレはトカゲの頭を狙った。
地面ではナツがルーシィに指を向けていた。

「ルーシィ、牛出せ!」
「う、うん」

牛?お、そうか。ナツも飛ぶ気だな。
出てきた牛が、両手を組んで軽く腰を落とす。ナツがそれに向かって駆け出した。牛の手に、右足が乗る――

「ハッピー、落とせ!」
「あい!」

タイミングばっちりだ。落下したオレと同じく、飛び上がったナツも両手に炎を集めてる。

「「火竜のダブル煌炎!!」」






ナツってそういえばあんまり星霊の名前呼ばないですね。


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